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システムの勝利

イタリア北部で開催された2026冬季オリンピック大会が先頃終了した。各国の選手がその力量を競い合う様子について、私たちテレビ観戦者は、にわかスポーツファンではあったが、素人なりにスポーツの醍醐味を味わうことができた。選手たちの健闘は大変すばらしい。

それぞれの選手が個人競技であっても、選手一人の手柄にすることなく、コーチ、メンタルトレーナー、栄養士、スポンサー、その他多数の協力者たちの支援に対して感謝していたことが、強く印象に残った。ニット帽に掲げられた「チーム・ジャパン」の標語が輝いていたように思えた。

一人の選手、一つのチームが活動するためには、さまざまな要素、条件がある。選手の身体的、技術的コンディションづくりに加えて、精神的マネジメントや資金的支援も必要である。さらには社会全体の理解も必要であり、施設の建設や運営のためには地域の理解と支援が欠かせない。とくに縁の下の力持ちによる貢献は知る人ぞ知る類の話で、後日談や裏話としてしか伝わらないが興味深い。

どの組織でも同じ原理が働いているようである。私は、大学での例として、30年以上も前のことになるが、以下のようなケースを強く記憶している。ある大学のキャンパスでは、言語教育として新たな試みが実施されていた。実践的で、興味深く、教師陣も学生諸君も熱心に取り組んだ。ユニークな教材作りや課題レポート、発表資料作成も深夜まで及んだ。旧来の限定的な語学教育とは異なり、意識が高く、厚みのある言語教育が実現した。

それらの試みの成果の一つに、全国規模のスピーチ大会入賞がある。このスピーチ大会は、大手メディアが毎年主催しているもので、参加した学生たちが上位を独占する勢いだった。外部組織からも、その教育方法が高く評価されたことは言うまでもない。大学内部の人たちからも支持された。ある大学理事は言った。

「学生によるスピーチ大会の受賞は大変うれしいことである。さらには、教師陣による指導体制、指導方法は高く評価できる。いわば『チームの勝利』だ!」

当事者である教師陣が、この称賛の言葉を聞いた時の明るい表情は忘れられない。私は映画の制作関係者一覧を示すエンドロールを見るのが好みであるが、これを見終わってからおもむろに席を立つ。「チームの勝利」ととらえる考え方は、「システムの勝利」「仕組みの勝利」と言ってもよく、ものごとの全体をつかむことの重要性を示唆しているようでならない。

(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)