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師の教え

人生の師匠は、学校の先生に限るわけでなく、人生で出会った、すべての人たちが皆師匠といった感じである。思い出すままに、私が記憶している言葉のいくつかを以下ご紹介する。

「初めと終わりはきちんと挨拶せよ」
・・・言いっぱなしだと、生意気な奴だとの印象が強くなる。落語家の立川談志は、若い頃から生意気な男として有名だったが、高座の初めと終わりのお辞儀が丁寧なこと、この上ない。

「自分だけで何でもできると思うな。本人の気が付かないところで、多数の人が助けてくれているのだ。」
・・・人はよく見ているし、また見えないところで助けてくれるものだ。天狗になるなよ、の教え。結婚式におけるある人のスピーチより。

「子供が沢山いると苦労でしょうと言われるが、子供たちからは、いろいろな分野の話題が聞けて面白い。」
・・・肝っ玉かあさんの心意気。このくらいの気持ちがないと、大所帯をまかなえない。

「赤ちゃんは泣くのが仕事だから」
・・・新幹線内でのこと。年配女性の一言は、若い母親を元気づけ、周囲の人々を和ます知恵となる。<赤ちゃんは泣く>の箇所に、自分自身の仕事内容を入れてみるとよい。

「ものごとは締めが肝心だ」
・・・最後のダメ押しで、全体の出来栄えは向上する。このちょっとした差が大きい効果を生みだす。

「それで何が分かったのか」
・・・結論と貢献が何なのかを明示することが大事である。そこからまた元に戻っていく。

「先輩の先生方は、どなたもオリジナルな論文や学説を発表することで、独自の考えを示し学問の世界に貢献してきた。君も、自分自身が作ったオリジナルの考えで貢献するんだな。」
・・・学位の審査会終了後の懇談の際に発した審査委員長の一言。この審査対象者は無事に合格し、現在活躍中である。

「長生きに孝行息子息が切れ」
・・・川柳作家増田幸一さんの作品。

近頃は人生史・誌を読む機会が増え、言葉の持つ意味や力を感じることが多くなった。

(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)