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パリ五輪の夏

今年の夏はパリ2024五輪大会で賑わった。五輪大会に対しては、賛否両論さまざまな意見があることは承知しているが、2021年開催の東京2020五輪大会がコロナ禍かつ無観客で実施されたことに比べると、いつもの五輪が戻ってきたようで大いに楽しめた。そして、開会式や閉会式、そして競技会場に至るまで、パリという都市が競技の舞台であることを強く印象づける大会ともなった。

残念ながら現地には行けなかったが、テレビ画面でも十分に楽しめた。テレビ観戦した競技の中で一番強く印象に残っているのは、女子やり投げの北口榛花選手の金メダル獲得である。彼女は言語の異なる国で練習に励み、選手として必要となる技術と精神力を鍛えた。体格も立派で、その愛嬌のある笑顔、立ち居振る舞いは人々の人気を独り占めした感がある。

少女時代からバドミントン、水泳などの種目でも、全国レベルで活躍したとのことである。魅力的な選手が登場したものである。女子やり投げ競技は、必ずしも一般に知られている競技とは言えないが、競技自体を世に知らしめたのは大きな功績である。

競技で使用する槍は、指定の槍立てに各人持参の槍を立てかける。そして競技に使用する槍は、他の選手所有のものでもかまわないというルールを知り、びっくりした。履いているシューズも、左右で異なるとのことだが、足への力のかかり具合が異なるので、教わるとなるほどと思う。

強い印象が残った競技や場面は受け取り方により異なる。私の個人的な感想を列挙すると、何に関心を持ったのかがあらためて再確認できる

・スター選手:新たに誕生、連続金メダル受賞など

・期待通りと期待外れ:世界最高峰の勝負は、紙一重、一瞬の勝負であることを痛感。

・逆転劇:勝者と敗者。勝って涙、負けて涙。

・新競技:ブレイキンはトリッキーな動作と音楽との調和という高度な技を楽しめた。

・歴史の壁突破:世界でも最高の大会での世界記録、自己最高記録などは立派。

・勝者の態度・敗者の態度:「勝って奢らず、良き敗者たれ」であるが、競技に関する日本流の礼儀作法は、国際的にも手本になりうるのではないかと思った。

・ルール順守:未成年選手の喫煙による出場辞退や、100gの体重超過で決勝戦に出場できずに失格などがあった。

・テロ事件:大会開催直前に爆破事件が発生した。

・環境への配慮:セーヌ川の浄化作戦と利用とにより、トライアスロン競技が実施された。企画自体はよかったのだが、一方で大腸菌などの衛生・健康問題が発生した。

その他としては、授与されたメダルの劣化、宿舎の設備、食事内容など、話題は挙げれば切りがない。大会終了後に選手たちがテレビ出演した際に、さまざまなエピソードが披露された。ネット情報も加わり、パリ五輪物語は、大会終了後も賑やかに展開中である。選手たちの人柄を知ることもでき、これらも大いに楽しめる。

とにかく、全力を尽くした選手、応援した観客、運営関係者、ボランティア、報道関係者、そして縁の下の力持ちとして活動された皆さんたちにはご苦労様といいたい。そして、公的機関、企業、その他による資金提供が支えになっていることは言うまでもない。関係者皆さんの努力のおかげで、私たち一市民が、歴史に残るスポーツのすごさと魅力を感じ取ることができたのである。

この文章執筆中にパラリンピックも始まった。四年後は、トム・クルーズの待つロサンジェルスの五輪大会を楽しむことにしたい。

(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)