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ものごとを考える上でまず大事なことは、私たちの関心、興味の持ちようである。関心や興味がなければ、事が始まらず、人は熱心にものごとに取り組まない。「勉強しろ、勉強しろ」といわれても、やる気や関心がなければ、どうにもならない。今回は、関心や興味について考えてみたい。
山の向こうには何があるのだろうかという関心は、人々を探検に誘う。探検家は未知の大地に足を運ぶ。命がけの危険を冒してでもやってみようという心意気は、冒険者の精神である。そのようにして未踏峰の頂きに挑戦し、さらには遠方へと航海の旅に出て、新大陸の発見を目指した。高さや遠さへの挑戦ばかりでなく、時間への挑戦は、歴史探究や、物理学の研究となる。探査衛星「はやぶさ」の挑戦は、日本の人々の興奮をももたらし、強く記憶に留める。そして、人間の精神面の探究は、精神科学へと導く。「さらに、さらに」という興味は、絶えず人類の挑戦心を挑発している。これらの挑戦は、必ずしもその分野に秀でた人にのみ限られるわけではない。私たち普通の人間でも同じことだ。
興味関心のことを、研究者たちは少し硬い言葉ではあるが「問題意識」と呼んでいる。英語でも、’a sense of problem’が大切なことは、学生諸君も習うことである。興味関心の違いがはっきりと表れるのは、言葉の読み方である。例えば、「市場」という言葉を取り上げてみよう。どの立場から見るかによって、読み方が変わる。家庭の主婦が買い物に出かけるならば、関心の先は大幅値引きの品目であり、行く先は商店街の「いちば」だったりスパーマーケットだったりする。株式投資をする人は、国際情勢や経済動向をにらんだ「しじょう(マーケット)」に関心を持つ。経済学部の学生ならば、需要と供給からなる「市場機構(マーケットメカニズム)」を思い浮かべるかもしれない。これらは、それぞれの立場からの興味や関心の違いを物語っている。
私は都市研究者なので地理的な用語に触れる機会が多く、言葉の意味合いの微妙な違いに出会うことがある。例えば、「地形」という単語もそのうちの一つである。山の地形といえば、山が険しいとか、なだらかなどという山の形を意味し、「ちけい」と読む。ところが、不動産関係者ならば「じがた」と読み、三角形の不整形なものなどの土地の形状を意味する。土地の形状によってその土地評価が異なるから、「じがた」なる表現は重要である。もう一つの読み方は「じぎょう」であり、これは、建物を建てる前に、土地を土固めることである。「エンヤコーラ」の掛け声とともに、昔は作業員が手作業でやっていたが、いまでは機械を使って土を固めている。見慣れた地形という言葉も、「ちけい」「じがた」「じぎょう」といろいろなので、その読み方はなかなか厄介である。要は、どのような文脈で、どのような関心から何を読み取るかである。
どのような立場から、どのような事柄に着目し、どの範囲までを扱おうとしているのかについては、視点、視野、視座、視角、視界などの言葉があり、ものごとを視る際のポイントを如実に示している。ビジネスチャンスというが、商売の良い機会にするもしないも、どのような関心から狙いをつけて形にしていくか、そして商品化・事業化をどのようにするか、などが問われる。私たちは、日頃から関心や興味を広げかつ深め、そして新たな組み合わせなどに努める心掛けを大事にしたい。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
