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最近のニュース報道の一つに、スターバックス(略してスタバ)の新店舗が鳥取県にできたことがある。これまで鳥取県は、「砂場はあるが、スタバはない」という自虐的な台詞で有名だった。ニュースになったということは、一つのスタバ店も無かった県へのスターバックスの店舗立地がニュース価値を持っていることを意味する。スターバックスに関しては、これまでに創業者のシュルツの著書や、日本関係者の著書があった。しかし、このような時期に、日本への出店の経緯はかねてから知りたかったことである。日本進出当時に、日本側のコンサルティングを担当した人が執筆した本が最近出版された。
書名は『日本スターバックス物語』で、著者は日本へのスターバックス店導入を担当し、コンサルタントとして活躍された梅本龍夫さんである。日米間での折衝の末、50%ずつの合弁会社ができた。つまり対等の関係で共同事業を進めようというわけである。スターバックス本社からすれば異例のことだった。日本ではまだ無名だったスターバックスだから、立地場所の選定など、苦労も多かったことだろう。そもそも、アメリカのコーヒーは薄味で評価は低かった。私も留学時代に、街で飲む薄味のコーヒーは、日本の10分の一程度の値段だったと記憶する。日本の伝統的な喫茶店も減りつつあり、その後は100円コーヒーなどが客を引き付け、ハンバーガー、アイスクリーム、ファミリーレストランなどの外食チェーン店が勢いを増していた。「スタバ」は、コーヒー店には違いないが、従来の喫茶店とは異なり、家、勤務先に次ぐ、「第三の場所」(サード・プレイス)というコンセプトを主張していることは有名である。パソコンを開く人、スマホをいじる人、本を読む人、商談を進める人など、スタバ利用客の振る舞いは実にさまざまである。
出店のための共同事業を進める上で、組織のチームを効果的に動かすことが肝要である。その際に、トップがチームを引っ張っていくリーダーシップ型と、チームの構成員が支えるフォロワーシップ型の二つのタイプがある。この本のコンセプトでは、フォロワーシップ型の進め方が一本柱として通っている。その上で、副題にある「個性派集団の挑戦」がはじめて明らかにされたのである。登場人物たちは、「○○さん」と表現されており、あたかも読者が、以前から身近に知っている人たちに思えてくる。共同事業の物語は、経営者、スタッフの接客サービスなどの登場人物、居心地の良い環境、経営戦略、立地展開など、「スタバタッチ」とでも言えるようなシステムが構築されている。ビジネス論として読むもよし、物語論としてもよし、フォロワーシップ論としてもよし、でさまざまな読み方ができるのも本書の特色である。
近年、日本側の会社がその使命を終え、アメリカの本社に所有株を売り渡したので、100%アメリカ出資のスターバックスになった。プロジェクトに参加した人たちも変化を遂げつつあるようだ。ちなみに、本書の著者は、今年から大学の教壇に立っている。大学にとっても、学生諸君にとっても良い刺激になっていることだろう。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
