- ホーム
- Men’s Life Style


2023/08/31
2023/07/31
2023/06/30
2023/05/29
2023/05/02
2023/03/30
2023/02/27
2023/01/27
2022/12/30
2022/11/29
2022/10/31
2022/09/30
2022/09/01
2022/07/29
2022/07/01
2022/05/30
2022/04/29
2022/04/04
2022/02/26
2022/01/28
2021/12/27
2021/11/29
2021/11/05
2021/09/28
2021/09/03
2021/07/29
2021/06/29
2021/05/31
2021/04/29
2021/04/02
2021/02/26
2021/01/29
2020/12/26
2020/11/30
2020/10/30
2020/09/29
2020/08/31
2020/07/31
2020/06/30
2020/05/29
2020/05/01
2020/03/30
2020/02/28
2020/02/03
2020/01/02
2019/11/28
2019/10/29
2019/09/28
2019/09/02
2019/07/30
2019/07/02
2019/05/29
2019/04/27
2019/03/30
2019/02/27
2019/01/30
2018/12/28
2018/11/28
2018/11/02
2018/10/01
2018/08/30
2018/07/30
2018/06/29
2018/05/31
2018/04/30
2018/03/31
2018/02/27
2018/02/01
2017/12/27
2017/11/30
2017/11/01
2017/09/29
2017/08/31
2017/07/31
2017/06/30
2017/06/08
2017/05/29
2017/04/28
2017/03/29
2017/02/27
2017/01/31
2016/12/28
2016/11/29
2016/10/28
2016/09/28
2016/09/02
2016/07/30
2016/06/29
2016/06/02
2016/04/27
2016/03/30
2016/02/26
2016/01/30
2015/12/29
2015/11/30
2015/10/29
2015/09/30
2015/08/31
2015/07/30
2015/07/04
2015/05/30
2015/05/01
2015/03/31
2015/02/27
2015/02/04
2014/12/28
2014/12/01
2014/10/30
2014/10/01
2014/08/29
2014/08/01
2014/07/01
2014/06/01
2014/05/01
2014/04/01
2014/03/01
2014/02/01
2014/01/01
2013/12/01
2013/11/01
2013/10/01
2013/09/01
2013/08/01
2013/07/01
2013/06/03
2013/05/01
2013/04/01
2013/03/01
2013/02/04
2013/01/01
2012/12/03
2012/11/01
2012/10/03
2012/09/04
2012/08/03
2012/06/28
2012/05/11
2015/11/01
子供の発想の豊かさに驚かされることは多い。こどもの発想を、私たち大人が役立てることはできないだろうか。
もう随分と昔のことになるが、近所に小学2年生くらいのヨッちゃんが住んでいた。ヨッちゃんは、ある日曜日の夕方、外出からの帰り道で、お父さんと手をつなぎスキップを踏みながら、何やら楽しげだった。
「ヨッちゃん、楽しそうだね。どこへ行ったの?」と私。ヨッちゃんの返答がふるっていた。「うん、楽しかったよ。今日は『おんまの運動会』に行ったの。フク面をかぶったのもいたよ。」
その時のお父さんの何とも言えない顔の表情が印象的だったが、子供の表現は何とすばらしいことか。言うまでもないことだが、「運動会」は、幼稚園や小中高の生徒たちが行うスポーツ競技や遊戯のことである。そして、お馬の競技は、「競馬」のことである。大人の表現には、馬と運動会の二つの言葉はなかなか結びつかないが、子供にとってはまことに自然な連結である。子供たちが、限られた数の言葉で表現しようとした結果として、「お馬の運動会」なるすばらしい表現が生まれたのだろう。大人ならば、数多くの言葉の中で、さまざまな組み合わせを考え、魅力的な言葉を紡ぎだす。
表現と言えば、丁度今宇宙を飛んでいる最中の宇宙飛行士油井亀美也さんが、地上の安倍晋三首相との交信で、開口一番発した言葉も面白かった。
「安倍総理、エー、高い所から失礼します。私、初めまして、・・・」
油井さんご自身も何とも言えない雰囲気ではあった。「高い所から失礼します」なる表現は、日本社会特有なのかどうかは知らないが、広めの会場で挨拶する際の常套句であり、ある秩序を反映している。「お電話で失礼します」という表現は昔からあったが、「Eメールで失礼します」とか、「ネットで失礼します」とかはあまり聞かない。環境が変わると使う言葉も変わるし、価値観も変わる。高い所である宇宙空間では別の秩序が働くから、油井さんの発言は、ご本人がいみじくも感じているように、何とも不思議な表現ということになる。
ヨッちゃんのその後の人生がどのようなものになったのかは、私には分からない。競馬ファンになっているかもしれないが、まさか、このコラム欄に登場し活用されているとは、夢にも思わないことだろう。私たちは、ある環境と別の異質な環境にある事柄の組み合わせによって、新たな価値を生み出すことを日常的に模索し、つくり出しつづけている。ビジネスも、日常生活も変わることはない。これが発想の原点なのである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
