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(2015/8/01)
世の中に地図愛好家は結構多い。物理学者の堀淳一さんのように、大学を退職後に随筆家に転じ、地図に関する多数の著作を発表している人もいる。道路地図、観光地図、地下鉄路線図など、テーマ性のある地図は主題図といい、多くの人々が日常的に使っているのでお馴染みである。天気図は毎日の気圧配置や台風の動きなどを知るのに便利であるし、車を運転する人は、車に搭載されているナビ(自動車運行システム)が便利である。土地を購入したり、土地の税金がいくらかかるか気になる人には地価マップや路線価図が必要かもしれない。近年の防災の関心からすると、土地のハザードマップ(危険度地図)も注目されている。もう少し専門的な地図になると、国土地理院発行の地形図があり、等高線や各種情報が詳細に記載されており、登山などに便利であるばかりでなく、土地利用の変遷、地域の変化などを分析するためにも使われている。
自分が住んだ町の古地図を持つことは、思い出となって楽しい。私は、かつて住んだことのあるイギリスのケンブリッジの古地図を持っている。古地図と言ってもそれほど古いものではなく、約160年前の1800年代半ばのものである。今から30年ほど前現地に滞在した際に購入した時は安かったので、この古地図に合わせて日本で作った額縁の方が高かったぐらいである。地図の縁取りとして絵が描かれており、なかなか美しくもある。地図を美術品と考える人がいるが、自然なことに思える。ケンブリッジは、研究生活に加えて家族と暮らした思い出がつまっているので、思い出付きの地図ということになる。
私が現在住む町は、かつて東海道の宿場があった所である。本陣があった所のお宅は、その表札も本陣があった当時の名前なので、子孫が引き続き住んでいるのだろう。最寄駅の構内には、広重の東海道五十三次の宿場のタイル絵があり、かつ宿場町の絵図などが壁に掲示されている。日本らしさの一例として、海外のテレビ番組で紹介されたことがあり、私もその番組を見る機会があった。外国人にとっては浮世絵が日本らしく見えても、日本人はあまりに見慣れた場面ゆえか、あるいは忙しすぎるのか、皆さん素通りしていく。日本ならば、広重の東海道五十三次、各種名所百景、そして複製の古地図や錦絵などを購入し、自宅の壁にかけることをお勧めする。今住む場所の存在確認ができて、毎日見るのが楽しくなるし、意義のあることでもある。作家ならば、森鷗外は方眼図を自ら作成したし(復刻版がある)、池波正太郎は江戸の切絵図を見ながら時代小説を書いたことで知られる。
以上は現実の土地などに直接関連した地図のことであるが、イメージとして頭の中や心の中に抱く地図もある。これを「メンタルマップ」といい、研究も盛んである。アメリカのテキサス人は、アメリカ全土の地図を描く際に、テキサスを拡大して描く傾向がある。見慣れている所や繰り返し行き来している所は、近くに感じるが、山や川などがあれば、障害物と意識し、遠くに感じるものである。「川向うは遠い」とは日常的に使う表現である。逆に言えば、見慣れてもらい、繰り返し行き来する工夫をすれば、近くに感じてもらえる。意外にビジネスのヒントになるかもしれない。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
