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年の初めや誕生日を迎えた時など、人生の節目を感じるものである。最近の某経済紙の文化欄に、ある作家の随筆が掲載されていた。浅間山のふもとに一時期住んだことのある山荘と、今も使っている椅子にまつわるお話である。読んでみると、かつての家の持ち主と椅子の製作者は木工職人で、日本のウィンザーチェア製作の第一人者のようである。その名は村上富朗さん。1970年代半ばにニューヨークに暮らし、ソーホーに集まる家具作家に強い刺激を受けたことでウィンザーチェア製作に力を入れたようである。その氏名に私は見覚えがあった。
ニューヨークに滞在中の1970年代半ばだから、約40年前のことである。アメリカは1976年が独立二百年記念の年に当り、ハドソン川には帆船が航行し賑わっていた。村上さんとは何かの集まりで面識を持ち、お互いにおしゃべりし、その後手紙で何回かやり取りした。彼からは、ぜひ遊びに来てくださいとのことだったが、遠方ということもあり、行きそびれていた。私の手元にある写真には、小柄でひげを生やした若かりし頃のご本人と私(私も若かりし頃)が仲良くにっこりと一緒に納まっている。
作家の随筆によれば、木工職人は2011年に62歳という若さで亡くなった。その作家が使用している椅子は、木工職人存命中の最後から二番目に作成された椅子とのことであった。
私も、ニューヨークでの出会い以降の、それぞれの人生の道のりについて旧交を温めたかったと思うが、時すでに遅しであり時は待ってくれない。若い頃から付き合いのある人は、お互いの人生の歩みを知っているだけに貴重な存在である。近年、友人、知人が一人ずつ徐々にいなくなっていくので、早目にやれる時にやっておかないといけないなとつくづく思う。私が就職した頃の企業や官庁の定年は55歳だった。その頃の持論は、「人生は70歳まで、その後は呑気にかつ自由にやっていこう」、というものであった。しかし、どうもこの持論は再検討が必要なようで、持論の改訂版を出すかどうかを現在思案中である。
人生を対象にする研究分野に、ライフストーリー(人生史・誌)研究がある。第二次世界大戦終了後、学問分野は、コンピューターを活用し、数理モデルとデータ分析を進めることが主流となった。その結果、情緒や想いに満ち溢れた人生の歴史や物語は軽視されるようになった。ところが、どうも大切なことを沢山捨て去ってしまってきたことに多くの人が気づき始めたようである。その反省から、人々の想いや気持ちがどのようなものであったのかに光をあて、総合的な視点から取り組む研究が多くみられるようになった。この傾向は良いことである。
人生の物語は、その波乱万丈さは人により違いはあるものの、誰にもそれぞれある。また、人が生きて行く上で必要とする「知」もさまざまである。知的な活動の「知」には、論理知、経験知、身体知、関係知等々がある。人はまたそれぞれであり、手先の器用な人、体力のある人、気配りのきく人、気持ちの優しい人、奉仕する気持ちの強い人、黙々と下働きする人、計算の速い人、歌の上手な人、絵画の上手な人、笑わせるのが得意な人、リーダーシップを発揮する人、等々、さまざまな特徴を備えている。人生いろいろ、人の生き方は人それぞれである。人生はすべての知を駆使した結果なのである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
