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俗っぽくは、「イギリスの土地は女王陛下のものである」と言われている。どういうことなのだろうか。イギリスの土地所有を大別すると、永久に利用できる自由保有権のフリーホールド(日本の土地所有権に相当)と期間を定めた借地権のリースホールド(日本の借地権に相当)の二種類がある。不動産の案内に、リース期間99年とか期間199年などとうたってあるものをよく見かける。
私が読んだ本の中には、おそらくイギリスで最長のリースだろうとして、ロンドン中心部の土地建物の例が紹介されていた。それは、石炭関連の団体が借りている不動産で、リース期間は、驚くなかれ約3,000年だった。おそらく、地主が石炭関連の関係者で、土地を寄付したつもりなのかもしれない。この事例を紹介すると、イギリスの友人もびっくりしていた。
別の例としては、セントポール寺院の隣接地のパタノスター・スクエアの再開発がある。この再開発は、日本の不動産会社の現地法人が手掛けたものである。私の記憶に間違いがなければ、土地は寺院の所有地で、リース期間が299年のかつての契約を引き継いでいる。2000年代初頭の地代は、年間で約40万円であったが、今でもあまり変わりないと思う。借地の証を示す程度の少額の金額である。
イギリスの土地所有の仕組みは、おおむね次の通りである。1066年にノルマンジー公ウィルアムがイギリスの国王となり、国土の宣言をした。国王は部下である領主たちに土地を提供し、領主は見返りに兵士などの労力を提供する。領主は得た土地を農民に提供し、見返りに農産物を受け取る。この国王、領主、農民からなる構図は、私たちが歴史で学習する封建制度の仕組みである。
イギリスの土地はクラウン(国王)のものである、と現代のイギリスの土地法にも明記されている。したがって、土地所有権は、底地に当たる部分はクラウンのもの、永久に利用できる権利がフリーホールド、そして期間限定のあるリースホールド、の三つの塊として受け止めておくと理解しやすい。したがって、エリザベス女王所有の土地、チャールズ皇太子所有の土地など、王室を構成する人たちはそれぞれの土地を所有(利用)している。スコットランドは少し異なる土地所有制度なので、エリザベス女王は、バルモラル城を購入している。なお、王室所有の土地は、行政府であるクラウンエステートが管理している。
2001年刊行なので少し古くなるが、イギリスの土地は誰のものか、と題したK.カーヒルの本によれば、イギリスの土地所有の順位は次の通りとなっている。
1位は森林委員会、2位防衛省、3位ナショナルトラスト(イングランド・ウェールズ)、4位年金機構、5位公共施設(電気、水道、鉄道等)、6位クラウンエステート、7位英国王立鳥類保護協会、8位バクルー公爵、9位ナショナルトラスト(スコットランド)、10位アソル公爵トラスト、11位コーンウォル公爵、12位ウェストミンスター公爵、13位イングランド国教会、以下省略。
森林、国土防衛、公共インフラのための土地所有が上位を占めているのはなるほどと思う。さらに、貴族や教会が大地主となっており、また保護団体のナショナルトラストも土地の所有を増やしていることが分かる。よき景観保全のために奮戦していることの表れである。
ロンドン中心部の一等地には、エステート(不動産会社)という名のついた土地がある。一等地だけにその資産価値は莫大である。それらの不動産会社は、元はと言えば地方の領主が、かつてロンドンに滞在する際の場所として所有していたものである。ベドフォードスクエアー、グロスヴナースクエアーなど、現代にもその名を残している。現代では不動産会社を設置して、資産管理をしている。土地の所有状況は分かりにくいので気が付かないが、興味深い。
日本の場合も注意してみると面白い。あるホテルがあるとしよう。その土地の所有者は某保険会社、建物は某不動産会社、床を利用するテナントは多数の会社といった具合である。イギリスを鏡にして日本のことも考えてみるのも面白い。次はイギリス物産展にでも出かけて、少しイギリス気分を味わってみたいという気になってきた。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
