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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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手続き
2021/01/29
女優の岸惠子さんが、あるテレビの対談番組で、ご自分の一人娘が日本国籍でないことにある時気づき困っているとの話をしていた。日本の戸籍抄本には、自分自身の結婚の記載はあるが、離婚や出生の記載がなかったとのこと。結婚し出産した当時の夫は、著名なフランス人映画監督であった。岸さんは、生後3か月以内に、パリ大使館に出生届を出すべきだったのに手続きをしなかったことに、問題が起因しているようである。パリにある日本大使館に相談しても、法律上どうにもならないので、思案中とのことだった。岸さんの場合からも、生きていく上での手続きの大切さを感じる。生老病死の苦しさから、人がどのように生きていったらよいか、というのは仏教のテーマである。生まれた時の手続きが、その後の人生に大きな影響を与えるとは思わなかったのかもしれない。

手続きの最近の例でいえば、コロナ禍に伴う特別定額給付金の支給があった。多くの人々に一人当たり十万円が支給されたが、これも期限までに手続きをしなければ、受給する権利を失ってしまう。考えてみると、私たちの人生は手続きの連続である。そして、この手続きを円滑に処理するためには、いくつかの基礎力が必要であることを再認識する。まずは給付金の仕組みと書類に書いてあることを理解し、必要な事項に答える読み書き能力(国語)が必要である。また年度末の確定申告の場合ならば、計算力(算数)も必要になる。海外で運転をしたければ国際運転免許証が必要で、免許証取得のために英語(語学力)で申請する必要がある。

目下世界中が国難としているコロナ禍の事態に対して、どのように立ち向かったらよいか。これは医療の問題であり、経済の問題であり、社会全体の問題である。一定のルールの下での判断、手続き、さらに行動が必要である。そして、法律や制度を整備し、予算化を図り、対応策を検討、決定し、実行に移すのは政治や行政の役割である。ワクチンを海外から輸入し使用しようとすれば、ワクチンの認可、冷凍管理、輸送、接種会場の設営・運営・実施、使用後の注射針や医療用具の処理、一連の情報管理、等々の業務が全省庁にまたがり、さらには地方自治体の協力体制が必要な一大プロジェクトとなる。

人がより良く生きていくためには、多くの場合に、能力の認証となる資格が必要で、各種手続きが伴う。だから勉強して資格もしくは資格に準じる能力を獲得し、各種の手続きを円滑にする力をつけることが必要だ。これが生きていく上で勉強が必要な所以である。もしより良く生きていきたいと思わなければ、勉強をするもしないもその人の自由だと、私は答えている。

手続きは、煩雑で手間がかかることがしばしばである。そのために、手続きを代行する専門の組織や専門職の人が存在する。手続きを他人に任せるのも一つの方法だが、面倒な手続きを手際よく処理し、人生を大いに楽しみたいものである。楽しむためには、不断の努力による能力開発が欠かせない。時間に余裕のある人は、他人任せにせずに、自分自身で手続きをすべてやってみると、仕組みがよく理解でき、手続きに必要な能力を体得する訓練になってよいのではないかと思う。



(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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