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最近某都知事が世間を大いに騒がした末、辞任した。政治資金、危機管理、海外出張、その他さまざまな疑惑が生じ、連日マスメディアを賑わした。数年のうちに都知事選挙が3回も実施されることとなり、民主主義の手続き上とはいえ、都政推進を含めその損失は膨大なものになることだろう。その真相が何なのかは皆目わからないが、政治資金の使途疑惑の一つに、「クレヨンしんちゃん」なる漫画本の購入というのがあり、注目を集めた。どのように考えたらよいのだろうか。
大学の研究者の場合は、さまざまな素材が研究対象になりうるものである。一般人の世界ならば、遊びや娯楽と思われることが、立派に学問対象になる。因みに漫画学科もすでにあり、パイオニアである京都精華大学は2006年にマンガ学部(マンガ学科、マンガプロデュース学科、アニメーション学科)が開設され、2010年には大学院の修士課程が、そして2012年には博士課程も設けられた。漫画家の竹宮惠子さんは、教授、学部長、そして学長になった。今や漫画はマンガを経て、世界の’Manga’文化を形成し、日本の存在価値は高い。鳥獣戯画は漫画の初期のものとして現存し、日本が誇る財産の一つである。
私は漫画には不案内だが、都市研究をテーマとした講義の中で絵本を活用したことがある。利用したのは、バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』(The Little House)である。この絵本は1942年に発行されたが、コールデコット賞を受賞し評価が高い。私は、英語版と日本語の両方を持っているが、CD付で購入することもできる。その内容は、次の通りである。
・・・周囲に何もない丘の上に、ある日一軒の家が建った。畑を耕し、日々の営みが始まった。その後、周囲に農家がいくつか建ち、道も通り、次第に集落を形成していく。家が立て込んでくると、戸建ての家々も次第に集合住宅化、高層化し始める。鉄道も開通し、このちいさいおうちも、今や、高層ビルに取り囲まれた駅前の一軒家と相成ってしまった。このような状態だと住環境としてもあまり良くないので、移転を考える。その結果、このちいさいおうちはトレーラーに引かれて移動することになった。そしてまた郊外の何もない丘の上をその居場所と定めることになった、という物語である。
大学の講義室で子供の頃、この本を読んだことのある人はと聞くと、数人の手があがる。母親たちの場合だと、かつて子供に読んで聞かせたことがあるのでまた読んでみよう、と言ってくれる。コンピュータ好きの人には、昔流行った「ライフゲーム」(白黒の碁石が、あるルールの下で、誕生、生存、死滅を繰り返し、あるパタンをつくり出す)に似たものといえば分かり易いかもしれない。少し大学の講義っぽくいえば、数学のセル・オートマトンの応用であり、この手法を使って、都市を碁盤目状にマス目として捉え、分析する試みである。これに関連した研究論文も多数ある。
さて、私の書棚にある『ちいさなおうち』であるが、表紙もぼろぼろとなっている。新しい本を別途購入済であるが、とくに公的な研究費から手当てしたわけでもなく、私物である。研究費でも私費でもどちらでもよい、と考えている。「クレヨンしんちゃん」も、政治家としてきちんと説明してくれるとよいのに、と思う。とかくお金の扱いは境目がむずかしくなりがちであるが、公私にかかわらず、資金の使途は適切に行いたいものである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
