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数学の嫌いの人でも、小中学校の算数や数学の授業で、たった一本の補助線が幾何問題の解決につながる経験をした人は多いことと思う。なかなか気がつかないので、気がついた時にはハッとし、うれしくなる。一つ加えれば良くなるのに、欠けているから良くないことのたとえに、「画竜点睛を欠く」なる表現もある。今回は、日常生活や仕事をする上で、最後のちょっとした工夫の功徳について解説する。
私は長年学生諸君の指導に当ってきた。各学生がレポート作成などに一所懸命に取り組んでいるのはよく分かる。ところが、せっかくの努力が、最後の踏ん張りと一工夫に欠けるために損している学生を数多く見てきた。そこで教訓的に、単なるまとめはだめで、「まとめ上げる」ことが大事だ、と説いてきた。その例として二つほどご紹介しよう。
第一は、司馬遼太郎の発想である。人気作家の司馬遼太郎は鳥瞰的に捉える力に優れた作家だったようだ。司馬は、「現実をいくら足し算、掛け算しても思想が生まれない。・・・架空の絶対の一点を設け、そこをコアにして思想が生まれるだろう・・・」と言っている。「架空の絶対の一点」なる核を設定するためには、大変な能力を要する。司馬が執筆時に古本屋へ大量の書籍を注文したことは、語り草になっている。『竜馬がゆく』の場合で、古書店が集めた資料は約三千冊で、重さが一トン。金額にして、昭和三十年当時で1千万円だったという。「架空の絶対の一点」なる核をつくり出すための投資と言えよう。
第二は、最近、私が仲間と一緒に取りまとめた本のことである。先年亡くなられたT先生に師事した研究者仲間に声を掛けた。「T先生の顔を頭に浮かべながら、書きたいことを書いてください」と10名の学者に執筆を依頼した。執筆された皆さんは、それぞれ好き勝手に、大変興味深い原稿を寄せてくれた。そこまではよいのだが、それからが大変である。そのまま綴じて掲載したら、読者はばらばらな原稿を読まされることになってしまう。「バラバラ感」を持たせないために、どのように工夫したらよいのだろうか?
私は、それぞれの論考を、題名が広く包み込めるように、「時間」と「空間」の二つの軸を設定した。これならば、多くの論文は納めやすくなる。10名からなる執筆陣の多様な見方は、「視座」(T先生が好む言葉)という言葉で表現した。そして、10編を二つに分け、前半を「知的挑発」とし、後半を「発想法」で括った。そして、10名を「知的な円卓会議」の参加者に見立てることにした。円卓会議ならば、好き勝手な発言は大歓迎となる。その結果、『時空間の視座 T先生と共に』という題名をつけた本の刊行に至ったのである。
日常生活でも仕事でもそうであるが、補助線的なちょっとした工夫により道筋をつけ、その上で良い結果にまとめ上げることが可能となる。そして、よく「まとめ上げる」ことが新たな価値を生み出すことにつながるのである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
