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笑いは古今東西に存在するが、日本の笑いの代表格に落語がある。寄席に閑古鳥が鳴くこともあれば、落語ブームに沸く時もある。現代の落語は、今どの時期にあるのだろうか。東京の新宿で仕事をしているにもかかわらず、これまで新宿末広亭に行く機会がなかった。新宿末広亭は、建物(1946年建築)など明治大正の雰囲気が残り人気がある。そこで、仕事が休みの日に久しぶりに寄席に行ってみた。
落語を聞きに行ったことはこれまでに何度かあるが、主にホールや鎌倉の寺などだった。そこで寄席行きとなると久しぶりのことだった。最後に寄席に行ったのは、人形町末廣が閉館する最終日の1970年1月だったから半世紀近く前の大昔ということになる。落語は、今やいろいろなメディアで聞くことができる。テレビ寄席、CDやネットの寄席、ホール、寺、蕎麦屋、喫茶店などでの落語、老人ホーム、学校などの出前寄席などがあり、今や伝説となった名人たちの落語をネットで見聞きすることもできる。さらには刑務所での慰問落語もあるから、受刑者たちは更生して落語で笑える社会に戻りたいと思うことだろう。
新宿末広亭の寄席の出し物は、ひと月を上席、中席、下席の3期に分け、さらに一日は昼席と夜席の二区分からなる。よって、ひと月に6種類の出し物(セットメニュー)が楽しめる。昼席は12時から午後4時半まで、そして夜席は午後5時から9時までである。料金は昼夜を含めているので、昼の12時から夜の9時までいても、または途中で抜けても同一料金だからお得である。当日は昼食を早めに済ませて、午後1時過ぎに席に着いた。この日は、落語は勿論のこと、物まね、紙切り、漫才、太神楽、三味線漫談など、いわゆる色物もあり楽しめた。因みに、番組中で落語は黒色で、そしてその他の出し物は赤色で書くので、色物と言うらしい。ある落語家の「年寄は、ゲンキ(元気)とゲンキン(現金)が一番」の台詞が受けていた。健康と経済力のことだから、まったくその通りだ。舞台上の扁額には、「和氣満堂」とあるが、まさに、和やかな雰囲気が部屋に満ちていた。昔ならば落語やその他出し物の内容に強く関心を持ったのだが、今回は今までと違って、建物のつくり、内装、店構え、経営、日本文化全般のことなど落語以外のことも気になった。
舞台には、床の間があり、背景はふすまである。あらためて、落語はお座敷芸であることを再確認する。これは、ホール落語では体験できない。昔人形町末廣に行った時は、下足箱があり、すべて座敷に座布団だった。だから、「膝送り願います」と、協力し合って狭い空間を活かしたものである。新宿末広亭は、中央部の椅子席と両側の座敷からなり、長時間になる場合は疲れなくて都合がよい。お座敷芸といえば、かつて慶應義塾長だった小泉信三さんが、ご贔屓の古今亭志ん生を自宅に招いて落語を聞いた話を小泉先生の随筆や志ん生の聞き書きで読んだことがあるが、これなどはまさにお座敷芸の極致である。
笑いはストレス解消につながり、人々の自然治癒力を高めることが様々な研究で判明している。落語家が演じる舞台と客席という小さな空間に座布団とお茶を用意し、落語家の話芸、伝えるべき噺、それに扇子と手拭があれば何とかなる。「コミュニケーションとは、メッセージを通じての相互作用である」と考えているが、落語が、落語家の話芸を通じての落語家と観客とのコミュニケーションであることを実感する。人生や世間のすべてを語れる落語は、何とも創造的な世界であるし、それを体感できる寄席という装置はすばらしい。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
