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日本三景といえば、天橋立、松島、そして宮島だが、最近宮島を訪問する機会があった。広島県にある宮島は、安芸守だった平清盛が寄進した厳島神社など古くから有名で、1996年に世界遺産として登録されている。宮島は神の島としても知られ、花崗岩からなる景観が特徴的で、植生も古来のものが保存されている。海外からの観光客も多く、文化豊かな土地である。この旅を通じて、日常と非日常のことについて感じる所が多々あった。
一般的に旅に出ることは非日常的なことであるが、私にとって現地に足を運び、まちを見て歩くのは、都市・地域の研究者という職業柄からは日常的なことである。居住地である自宅と就業地である勤務先は通常は異なることが多いが、自営業の人などは職住一致である。私の場合は、自宅に書物や資料やパソコン等があり、考えごとをするのも、考えたことをまとめるのも自宅である。よって職住一致に近いから、旅行などに出かけることは非日常でもあるとともに、研究対象としては日常的なことでもあるので、旅の意味については少し説明が必要となる。ヴァイオリニストの葉加瀬太郎さんが、演奏旅行で世界を飛び回るのが日常なので、自宅に戻った時は稀な時間と空間を経験することになるので、非日常の感じがするとラジオ番組で語っていたが、その気持ちは良く分かる。
日常と非日常の違いは、環境を変えるかどうかということと関係する。環境が変われば、変わりつつある環境の中でうまく適応しなければいけないので、環境適応能力が問われる。転職は職場が変わることだし、昇進もしくは降格は、職位が変わることである。定年退職などは、勤め人にとっては大きな転換点になることだろう。いろいろな要因で、環境は変わる。環境が変わることは、適応のためには少し大変さを伴うが、ご本人が成長し発展するための契機となる。物理的に移動するなどして環境を変えても良いし、頭の中だけで概念的に変えても良い。
積極的な生き方、考え方をする人たちを観察すると、ほとんど例外なく、その人たちは環境の変化を前向きに受け止めて、前向きに進めているようだ。ものごとは、日常の比較的整った秩序ある状態から、意図的に破壊(創造的破壊)することにより変化する。または意図せずに、戦争、大災害、技術革新など何らかの外部からの変化要因により整った状態が崩れることにもなる。混乱や混沌の状態の発生である。すると、ひょんなことから突発的に新たな気づきや発見や創発が生じる。活発な創発状態も、時間の経過とともにやがてまとまりを持った平常状態に落ち着く。その後は、マンネリ化や陳腐化により、平凡な日常に落ち着く。このようなプロセスが生物社会では一般的なようであり、創発の考え方は、組織、社会、都市などについても応用されている。
組織、社会、都市などにとって、日常にせよ、非日常にせよ、自発的に新たなものごとを生み出すことが期待される。そのためには、ひと・もの・かね・情報など、多種多様な資源を集積し、それらの素材を変換し、展開する力に長けていることが肝要である。そして、ダイナミックに変化し続けることが、可能性や魅力を生み出し、人々を引きつけることにつながる。
旅をすると、気分転換にもなるし、いろいろなことを知りたくなる。県立広島大学が宮島研究を推進し、その成果としてまとめた本が『宮島学』として刊行されている。宮島研究は、地理、歴史、地域経済、観光学、言語など、多方面にわたる学習にも活用できる。江戸時代に刊行された『芸州厳島図会』なども読んでみたいと思う、春の宮島旅行であった。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
