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川に新たに橋がかかると、かつては川向うで遠く感じていた土地も一気に近くなる。急速なネット社会の発達により、あたかも無数の橋がかけられたかのごとく、ものごとがインターネットで一気につながりつつある。それにともない、新たなサービスやビジネスモデルが実現する社会となっている。今回は橋をかける話題を取り上げる。
20年ほど前になるが、美智子皇后が1998年にインドのニューデリーで行われた国際児童図書評議会の基調講演として、ご自身の子供時代の読書の思い出を語っている。皇后は1934年生まれなので、皇后の小学生時代は第二次世界大戦中にあたる。不自由な時代の読書体験は貴重なものであり、読書がご自身と世界をつなぐ架け橋となっている。その講演内容は、読書への愛がこもった内容だった。その講演と同じ内容のものがテレビで放映され、多くの視聴者に感銘を与え、本としても刊行された。その本は、『橋をかける?子供時代の読書の思い出?』と題されており、現在では文庫本も出版されている。日本の皇后の子供時代の読書の思い出を知ることができ、さらには皇后の持つ深い教養が感じ取れる。この本は日本語と英語の二か国語が併記してある。私は数冊を所有しており、外国人へのお土産として差し上げることがある。
橋をかけると言えば、能舞台には橋掛りがあり、本舞台と鏡の間(出待ちの場所)との間の渡り廊下のことを意味する。橋掛りは、ある距離感を感じさせる効果を有し、あの世とこの世を結ぶ架け橋とされている。能のモチーフは、霊界からの来訪者に出来事を物語らせている所にある。私たちが能の世界を堪能するのも、この世とあの世の異次元の物語に想いをはせるからなのだろう。
人と人とを結びつける役割に仲人さんや仲介人があるが、不動産屋さんならば、売り手と買い手との仲立ちをする。ある時、『南総里見八犬伝』の小説で知られる江戸の文人滝沢馬琴を解説した本を読んでいたら、人と人とのつながりを付ける世話人の役割として、「橋掛人」なる言葉があることを知った。
現代社会の枠組みの中で、人と人とのつながりが価値を生み出すとする考え方を強調しているのが、「ソーシャル・キャピタル論」である。文字通りに訳すと「社会資本論」となるが、道路、鉄道、通信などのインフラ設備を指す用語としてすでに使用されてきているのでまぎらわしい。人間関係を示す言葉を入れた方がより分かり易くなる。そこで、「社会関係資本」もしくは「人間関係資本」と呼んで区別しているようだ。このソーシャル・キャピタル論では、似たもの同士のつながりであるボンディング・キャピタル(ここでは「結縁」と呼び、例として同窓会や県人会など)、と異質のものたちの連携としてのブリッジング・キャピタル(ここでは「架橋縁」と呼び、例として異業種交流など)がある。つまり、あるグループと他の異なるグループとを橋渡しして、より魅力的な効果を生み出そうとする考え方である。
現代は、さまざま事柄がつながることを通じて、新たな価値を生み出す時代である。多種多様な「橋掛人」が新たな発見を求めて、もの、こと、人などのつながりをつくり出しているが、そのことが現代のネット社会を特色づけているようである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
