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年度初めである四月は、入学式、入社式などがあり、時間の区切りや段階を意識する月である。今回は、日本の民俗学が教える「人の一生」を時間軸からみてみた。
人の誕生前ということになるが、妊婦が妊娠五ヶ月になると、戌(いぬ)の日に「帯祝」をする。これは、お産が軽いとされる犬(戌)に因んで、妊婦に腹帯を贈る習わしから来ている。そして人が生まれると、お七夜などの「出生儀礼」が行われる。誕生から百日目には、形式的な真似事であるが、お食い初めがある。七五三は、生まれた子供が無事に三歳、五歳、七歳になったことを祝い、お宮参りなどをする。二十歳になれば成人式を迎えるが、年齢制限がとれてアルコールの飲酒など、いくつかの権利を持つようになる。
人生の節目節目のこれら儀式のことを「通過儀礼」と呼んでいる。人生と言う名の時間を通過していく時の儀礼という意味である。所帯を持つ年頃になると「婚姻儀礼」があり、成人段階に入ると、33歳と42歳の厄年祝や年祝がある。成人として社会的に活躍した後は、引退の時期を迎え、引退後の生活に入る。昔は隠居といったが、最近は隠居と言う言葉を聞く機会が減った。隠居どころか、年金生活に対する不安もあって、終身現役化する傾向のようだ。そして、人生の終焉である死を迎える。座禅を組んだままで人生を終えた僧侶に対して、回りの僧侶は「おめでとうございます」と言ったそうだ。どのように死を迎えるかは、人の生き方として大切である。人生の生老病死の悩みを認識し、克服しようとしたのがゴータマ・ブッダ(悟りを開いた釈迦)であり、釈迦の説くことが仏教となった。
人間の誕生から死に至るまでを顕界という。人間が表で活動しているからの呼び名であろう。そして死後の世界を幽界という。興味深いことに、死後の世界は、顕界の鏡のようになっている。つまり節目が、対応しているのであり、それは、葬儀の手順を追うと良く分かる。初七日とか、一回忌、三回忌、七回忌などの儀式の存在がそれである。死者は、亡くなった後は、一連の「葬送儀礼」があり、死霊段階に入る。そして「祖霊儀礼」があり、祖霊化の過程に入る。そして、三十三回忌になると、死者は祖霊になる。ここで一連の儀式を終了することが多い。
孫などが生まれると、しばしば祖父母の名前をもらうことがある。おじいさんやおばあさんの生まれ変わりなどとよく言われて、人の一生が繰り返す。「輪廻転生」という言葉がそれである。遺伝子の伝承という現代科学の観点から見れば、それほど不思議なことでもない。ある時、作曲家のHさんから興味深い話を聞いたことがある。西洋の音楽とアジアの音楽の違いである。西洋の音楽だと、序破急、つまり序論、本論、結論的な流れがあるが、アジアの音楽、とくにインドの音楽は異なる。どのような流れかと言うと、同じ調子やモチーフが大きな流れの中で繰り返して出てくるとのことである。音楽の輪廻転生といったところだろうか。曲作りの組み立てが異なるということを意味する。
かくして人生は初めと終わりを繰り返す。身近なお年寄りを見渡しても、90歳以上はざらになった。人生百年といわれるようになった今日、自分自身の人生サイクルをあらためて見直すことが必要かもしれない。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
