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日本では、ここ数カ月は改元騒ぎで賑やかだったが、5月1日から年号が平成から「令和」になった。「れいわ」という音の響きは良い。令和は万葉集から採ったということだが、中国からやってきた私の教え子は、次の背景があると教えてくれた。
「令和」の令は中国語で「季節」の意味で、中国では、古くから「令月吉日」という言葉がよく使われている。また、中国の中高校の地理授業では、必ず張衡(ちょうこう、漢朝時代78~139年)の「地動儀」(地震感知器)が教えられるので、そこで張衡の「仲春令月、時和気清」(仲春令月、時和し気清らかなり)という言葉を知ったという。その言葉の出典は、張衡の名作「帰田賦・文選巻十五」である。張衡は、中国古代の偉大な天文学者であり、世界初の風向計、地動儀などを発明した地理学者でもある。
令和の出典とされる万葉集の該当する箇所の序文は、漢文(初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香)で書かれている。梅花の宴できれいな場面である。万葉集は「初春の令月、気淑しく風和らぐ・・・」、そして帰田賦は「仲春令月、時和し気清らかなり・・・」とあるから、昔の人は本歌取りのように参考にしたのだろう。新しい年号も、時間が経過すれば、その内にきっと慣れると思う。
年号もたかが言葉であるが、言葉は不思議なもので、意外に強い力を発揮する。私は、都市再生に関するある検討委員会で、都市開発や地域開発など、開発事業に関わる業界の人々のために、基本となる大切な言葉を考えてみたことがある。都市の開発に関して言えば、開発と言う言葉自体に何の責任もないが、地域開発や都市開発は悪しきものとの一般的なイメージがある。そこで、私が「開発」の意味を再考してみた所、18世紀の仏典に適切な表現があつたので、ここでご紹介したい。何と書いてあったのか?
「衆生の種々の善根を開発す」(開発はカイホツと読む。仏教用語。)
その意味は、「生きとし生けるものすべて(衆生)、その良き潜在的な可能性(善根)を見出し、展開し、実現する(開発)」ということである。なお、上記文言は、仏教学者の松長有慶さんの著書で知った。開発という言葉は、世間では悪者扱いされているが、言葉自体は素晴らしい内容を持っており、多方面で使える。私たちが悪くしているだけである。
開発については、量と質の両面を考える必要がある。量的拡大のことを成長といい、経済成長率などを言う。昨年からどれだけGDP(国内総生産)が増えたか、ということである。一方、質的充実のことをデベロップメント(発展)、という。例えば、予算規模は同じでも、予算の構成がよりバランス良くなれば、それは予算が質的に良くなったことを意味する。したがって開発の意味は、質的充実のデベロップメント(発展・展開)に当たる。この言葉は、どの分野にも当てはまるので、応用範囲が広い。ぜひ、ご自分の分野におけるキーコンセプトを考える際に活用されるとよいと思う。
もし読者がすでに定年退職後の生活をされているのならば、その時期と状況を適切かつ前向きにとらえる言葉を、自分なりに選ぶかつくり出すかして、より良く生きる人生のコンセプトにすると良いだろう。例えば、「余生とは、有り余る人生のことである」と表現してみるだけで、生き方も少しは前向きになるのではないだろうか。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
