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子供の頃は切手や古銭を収集していたこともあるが、あくまでも子供のレベルの話である。私に骨董収集趣味は無く、美術館・博物館を見学するか、テレビの骨董鑑定番組でも見ていればそれで十分満足である。しいて好みを言えば、刀の鍔と古い看板への関心である。これらはいつもいいなと思い、いくつかは所有しているが、数多く収集するところまでは行かない。古い看板の愛好家は結構いるようで、広告関係者に多いように思われる。先日、東京の品川区にある昭和ネオン高村看板ミュージアムを見学してきた。ここには400点もの看板が収蔵され、その一部が展示されている。
1887年(明治20年)に看板の本を刊行した坪井正五郎は、「御客は蜂、売り物は蜜、看板は花弁」と、人目につき、人を引きつける看板の力を花びらに例えている。江戸時代は、「・・・招牌はかんばんであり、看板也・・・」(『守貞謾稿』)と言っているように、招牌という中国語とともに、看板という言葉が使われていた。商品数や店名などが多数あることを反映して、店の看板は、平面のもの、立体のものなど多数ある。したがって、その分類方法も各種可能である。
私は、単純に看板の設置場所で分類することにしている。それは、路上型(建看板、箱看板)、軒下型(下看板)、壁型(掛看板)、障子型(障子看板)、屋根上型(屋根看板)、店型(衝立看板)の6類型である。文字が読めない人たちには、模型などの形で表現した方が伝わり易い。そこで、八百屋なら大根、お茶屋なら茶壺の、そして筆屋ならば筆の絵が彫刻された模型看板が、店先に吊り下げられていた。路上には、立派な柱を立て、大きな看板を掲げた建看板がある。例えば、錦絵などに描かれた駿河町の三井呉服店(現在の三越)は、正札につき「現銀掛け値なし」のキャッチフレーズが記された建看板で有名である。現金決済、正価販売なので、当時としては画期的な経営戦略をとったということである。その他の店先には、「蒲焼や」「絵本問屋」「薬種」などと紙に書かれた箱型看板が目に入る。
古い看板の現代的な活用として、私は宮城県丸森町の斎理屋敷の修復にあたって、木製の看板の活用を提案したことがあった。30年以上昔の話である。建築家が私の希望をかなえてくれて、1つのアクセントになっている。類似のものとして、東京の谷中銀座に、55もの新たなデザインによる看板が2007年に導入された。千葉大学のチームがデザインし、木彫刻看板の職人が制作をしたようで、現代と伝統との融合である。
伝統的な看板の将来はどのようになるのであろうか。現代では屋外広告物として取り扱われているので、屋外広告物としての将来となる。伝統的な木製看板の後は、電化したネオンサインが登場し、アドバルーン、ビルの屋上広告、と目は次第に上方に向かい、チンドン屋、サンドイッチマンなどの移動型宣伝は、車、列車、飛行機などの移動媒体による車体広告にまで発展している。昔の看板は、かたちそのものという感じがしたが、デジタル・ネットワーク社会では、情報という、形があるような無いような、何とも言えない展開に成っている。記者会見の背景となる衝立には、その組織のロゴマークや名称がいやが上にも眼に入る。動画などを活用したウェブサイトやSNSでの情報提供も、増大の一途である。
高層ビルともなれば、入口での案内表示が必要となり、ビルには袖看板が掲げられているが、必ずしも美しくはない。屋外広告物は、会社名や商品の存在の報知性はもちろんのこと、その取り付け装置としての安全性、大衆に健全に伝える公共性、そして景観などの環境性などの要素が必須である。私は、何とも味わい深い文化的価値を持った看板も生き残って欲しいと思っているのだが、一体どのようになって行くのだろうか。人々に訴求するための表現形態の一つとしての看板の行く末を見守りたい。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
