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今から45年程前になるが、アメリカの大学院に留学のために羽田空港を飛び立った。その時私は20代後半だった。多くの友人たちが見送りに来てくれた。ありがたかったが、見送りが大勢いたというのも、時代を物語っているようだ。
大学で種々の手続きが行われたが、学期の開始前後の院生たちの決まり文句は、「レジストレーションは済んだか?」であった。レジストレーションとは、講義科目の履修申告のことである。大学院の履修申告以外に、留学生が大学生活を送る上で役立つホスト・ファミリーの希望を問う書類があった。ホスト・ファミリー制度は、留学生側と迎え入れるアメリカ人家庭側の双方の希望を聞き、双方の希望がある程度合致する人を紹介し、大学事務局が仲を取り持つという制度である。留学生が異国で快適な学生生活を送るのを支援しようとする仕組みであり、留学生にとってはアメリカを知る良い機会となる。
私も申し込みを行った。私のホスト・ファミリーになったのはHさんご夫妻である。Hさんは、心理学のカウンセリングの博士号を所有し、教会などの宗教に従事する人たちのためのカウンセラーをしていた。家の周囲は一面とうもろこし畑で、ご自宅は広く、週末などにはしばしば食事に誘っていただいた。クリスマスの時にはターキーが出てくるし、留学生にとっては大変なごちそうだった。80過ぎのお父上は、遠路ご自分で車を運転して息子夫婦の所にやって来た。この年齢での運転に、さすがアメリカは自動車社会だと実感した。
私は家族の一員として扱っていただき、ご一緒に食事をした。私が、「アメリカ家庭の手料理は最高です」と言った時の、奥様のうれしそうな顔は忘れない。食後にいただいたマフィンがおいしかった。お代わりを聞かれたので、お代わりしたところ、次回以降は毎回沢山のマフィンが出てきた。私のマフィン好きは、どうもこの時以来のようである。
アメリカとアメリカ人の生活様式などをH夫妻から沢山学んだ。10年位前に当地を訪問した際には久しぶりに再会することができ、近況を報告し合い懇談の機会を持つことが出来た。ところが、つい先日、夫人から手紙が届いた。夫のHさんが亡くなったとのこと。私のEメールと電話番号が分からなかったので、知らせてほしいとのことであった。早速お悔みの手紙をしたため、お送りした。C夫人も今後の生活のことを考えて、息子さん家族が住む町と比較的近いところに、近々引っ越す予定とのことである。ご夫妻には息子さん二人がいて、孫もいるので、この一家の家族史は続いていく。
私のアメリカにおける異文化体験は、Hさんご夫妻を介して得るところが大であった。Hさんが数年前に脳梗塞から奇跡の生還をしたことは聞いていたのだが、ついにお迎えが来たということなのであろう。享年91。Hさんは、ステンドグラス制作が趣味だった。いただいたステンドグラスの鳩が私の机の近くの窓にあるが、これは45年もの長い期間にわたる交流の良き思い出を運んでくれている。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
