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家庭は自分自身が生まれ育った場所であり、両親の転勤などにより移り変わっていく。その家庭で親からしつけを受け、兄弟げんかをしながら共に育っていく。人間形成の上で、地域の環境が大きく影響するので、どのような家庭環境、地域環境で育ったかは重要である。私の場合は実家が下町の商店街の中にあったので、学校の仲間も商店の息子や娘さんが多かった。だから、「○○の何ちゃん」で通った。クラスメートの親の職業もさまざまで、家族ぐるみ、地域ぐるみの付き合いが普通だった。
通学期間が終わり、働いて報酬を得るようになると、第二の居場所である職場が登場する。日本の場合は長時間労働の職場が多いので、職場環境は、職場での人間関係、顧客との関係など、人々や組織を通じて活動し、学ぶことも多い。学校に通学していた時とは異なる社会勉強ができる場所である。
私の企業経験からも、会社に対しては「企業大学院」に通っているような気がした。扱っている製品やサービスは時代の最先端を行き、ものづくりは工学部、販売促進は経営学部の内容を実践しているようなものである。マーケティングの理論と実際が展開しているので、教科書などいらないという感じであった。国の経済や、扱っている産業分野の動向に左右されるから、経済学部や商学部でもある。企業社会の住民になるのだから、企業という名の集団の社会学でもある。
第三の居場所は、カフェやパブなどに代表される場所であり、家庭と職場以外で、憩いの場、交流の場など、精神をリラックスさせてくれる時間と空間となる、居心地のよい居場所である。そこで、この第三の居場所に着目して、「サードプレイス」論が唱えられている。酒飲みは居酒屋が、髪型を気にする人は理髪店・美容院が、そして、碁会所、図書館、寄席、ゲームセンターなど、人々の嗜好性にあった居場所は多数ある。米国シアトルから始まり、世界的に店舗数を増やしているスターバックスなどは、サードプレイスの役割を強調し、企業戦略の一つに掲げている。
今私がお気に入りの場所と時間といえば、朝目を覚ましてから、布団を出るまでの15分間のベッドである。この短い時間の間に、頭に浮かんだよしなしごとに考えをめぐらすのが楽しい。
改めて、私自身の居場所を数字で示すと、以下の通りとなる。一年以上住んだ都市数は、国内は東京、仙台、浦和、横浜の4都市、海外は、米国イリノイ、ニューヨーク、英国ケンブリッジ、ロンドンの4都市である。それぞれの都市が、自分自身の人生段階と連動するので、思い出も多い。それぞれの土地に対する愛着も、自ずと生まれてくる。
職場としては、本務の職場として東京、仙台、藤沢の三か所、そして兼務の研究所として新宿、横須賀、四谷の三か所、合計六か所がある。職場は同僚やその施設の利用者との交流があるので、毎日さまざまな出来事があり、発見することも多い。学びとしての職場といったら良いであろうか。同僚と一緒に昼食をとるので、食事処も自然に覚える。さらに、職業柄ゆえか、その職場を含めた周辺の地域の観察と理解は楽しみの一つであった。
私の職歴は、お江戸日本橋の室町にある事業所で始まった。ヘアサロン大野がある町である。そして、この3月末には、新宿が私の最後の職場となる。私にとって、職歴の始めと終わりに相当する場所である、日本橋と新宿は印象深い街となった。
私が関わっていた勉強会や研修会では、いつも二つの点を強調するのが常だった。それは、「道場」と「サロン」としての機能だった。道場では、お互いが切磋琢磨する場所としての道場、そして、お互いの人間的交流を深めつつ人間形成を図る場所としてのサロンである。一見無駄話に思えることでも、その後にどのような展開になるか、その可能性は誰にもわからない。だから人生は面白い。この両輪が、人間にとって必要なのである。
これからは、食卓を道場とサロンの本拠地にしで、読書を楽しみ、パソコンを操作し、考えをめぐらし、「食卓」教授として活動したいと考えている。そして、家庭の留守を守る「留守居役」として、小さな空間から無限大の広がりを持つ知的世界の住人になれたらよいな、と望むものである。それは、三畳の茶室と宇宙空間との関係に似ている。さてどうなることやら。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
