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久しぶりに、両国に出かけた。と言っても、相撲観戦ではなく、高校一年の時のクラスメート6名(男子4名と女子2名)の集まりのためだった。この日は、大相撲初場所の十四日目で、優勝を争う一敗同士の幕内正代と幕尻の徳勝龍の取組があるので、国技館周辺は盛り上がっていた。盛り上がるはずで、優勝 争いに加えて、天皇ご一家の相撲観戦の日でもあった。
両国駅は、かつては千葉方面からの鉄道の終着駅で、ここから農作物などの積み荷は隅田川を船で渡し、東京の町中に運ばれた。総武線により鉄道がつながったが、まさに下総と武蔵の両国が結ばれたのである。両国駅の駅構内には優勝力士の大きな額があり、お相撲さんの手形なども展示されている。昔の駅舎を改修して、江戸の町家風の飲食店街「江戸のれん」がつくられている。中に入ると中央には土俵がしつらえてあり、こんな雰囲気を持つ場所は全国でも珍しい。ここは案内所、飲食店、土産店などが揃っている。整った店の看板などはレトロ感があり好感が持てる。
駅周辺の町中には、横綱土俵入りのブロンズ像や横綱の手形のレリーフなどがある。国技館の脇には、特設の相撲グッズ販売店が場所中のみ仮設され、お馴染みの力士名入りの応援タオル、キーホールダー、ハンカチなどが売られていた。力士の名が入ったのぼりがはためく国技館の出入り口付近には、いわゆる出待ちの人たちが大勢いて、小さなお子さんの口からは沢山の力士名が上がり、相撲好きの様子がよくわかる。相撲を取り終えた力士たちは、サインを快く引き受けている。現役時代に見慣れた親方衆もサインをしてくれている。お相撲さんや親方衆はとにかく大きくて格好良い。
まずは、2年程前に国技館近くに新築された刀剣博物館を見学した。立派な刀がずらりと並び、壮観である。個人所蔵の名刀が寄託展示されている。平安時代のものから所蔵されており、刀剣ファンにはたまらないことだろう。刀剣女子なる言葉があり、ブームになっているらしい。女性客も多かった。私のお目当ては、刀の鍔である。鍔そのものは小さいが、その狭い空間にまことに見事なデザインである。これらも立派なものばかりで、見とれるほどであった。
武家社会は江戸時代の終わりまで長く続いたので、日本の刀剣文化は広くかつ深い。刀剣にまつわる日本語を思いつくまま記すと、「切羽つまる」、「真剣勝負」、「土壇場」、「切腹」、「鍔迫り合い」、「一刀両断」など、沢山あることに気づく。因みに、切羽は、鍔を止めるための装置で、相手の刀をぎりぎりで受け止める個所の金具の名称である。
なお、この博物館は建築家の槇文彦さん設計によるもので、コンクリートの打ちっぱなしとなっており、槇さんのデザインらしくすっきりしている。旧安田庭園に面した所は円形の設計で、二階からは庭園が眺望できるスペースになっている。この円形の設計は、かつてこの地にあった両国公会堂の設計を踏襲しているように見える。この公会堂で、高校の時に文化祭の演劇が開催されたことを思い出した。
刀剣博物館見学の後は、すぐ隣の旧安田庭園を散策。こじんまりとした庭園だが、手入れが行き届いており、なかなかよい。隅田川の水を引き込んだ潮入の回遊式庭園で、入園無料だからぜいたくである。再度国技館前を過ぎると、仮設テント内でテレビ中継をやっており、一敗同士の幕内正代と幕尻の徳勝龍の一番を見ることが出来た。土俵際で徳勝龍が取っていた右上手を放して、左手を使って突き落としを見事決めた。徳勝龍の勝利である。とっさに右上手を放したことが、フェイントになり、突き落としが決まったのである。現役力士時代に技巧派として活躍した元横綱若乃花の花田勝さんが、技術的にも納得するような的を得た解説をしていた。普段見ているテレビ局とは異なる解説者もよいものだと思った。
駅の改札口で、仲間と落ち合い日本料理店に向かった。57年ぶりに会う人もいて、6人それぞれの人生史の話題は尽きることがない。相撲の町両国での楽しい語らいと食事は、私たちにとって忘れられない一日となったが、再会を約したのは勿論のことだった。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
