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あらためてチェスの起源を紐解くと、古代インド発祥の戦争ゲーム「チャトランガ」に由来し、軍事訓練を兼ねていることが分かる。それは、キング、クイーン、ナイトなどの兵士が登場し、二人で戦うことから成り立っているゲームで、スポーツに分類されている。だから、かつて、アジア競技大会の一種目としてチェス競技が開催されたのである。近年では、マインドスポーツと呼ばれているらしい。
日本の将棋も古代インドから中国経由で導入されたらしい。今年7月16日には、将棋の藤井聡太七段が渡辺明棋聖を三勝一敗で破り、将棋界の王者の称号の一つである「棋聖」になった(将棋界には王将、王位など八つのメジャー・タイトルがある)。しかも17歳11か月での棋聖獲得は、将棋界のチャンピョン獲得で最年少の記録となった。藤井新棋聖は、将棋界の記録を現在次々と更新中である。新型コロナウィルスで暗い世の中ではあるが、明るいニュースとなり、多数のメディアで報道された。
藤井新棋聖は強さばかりか、その発言も魅力に富んでおり、すでにネットには名言集にまとめられている。もし将棋の神様に一つだけ願いを叶えてもらえるとしたら何か、との問いに対しての答えが秀逸であった。「せっかく神様がいるのなら、僕と一局お手合わせをお願いしたい」とは、藤井さんの弁。さすがである。
プロの棋士からも絶賛の言葉が寄せられている。「いやあ、鳥肌が立ちます。この将棋は、善悪を超えた芸術作品だと思います」。この言葉は、藤井七段が永瀬二冠を破り、タイトル初挑戦者になった一番での、飯島栄治七段の解説からである。
将棋は、二人の棋士により、9×9の81マスからなる将棋盤を舞台に、40枚の駒の動きから緊迫した戦いが展開し、結果として一編の詩を創作する。芸術作品と思わせる所以である。プロの棋士が、長く観ていたいと称される美しさを有した藤井棋聖のこれからの活躍が楽しみだ。
私自身は小学生の時の縁台将棋の経験しかない。藤井新棋聖誕生の日は、私の限られた体験による知識で、パソコンによる棋聖戦のテレビ観戦となった。勝負の決着がつく寸前の1時間強は画面にしがみついた。生中継は、わくわくドキドキ感を一層強めてくれる。小学生の時には、大人のマネをして何気なく打っていた手が、それぞれ定石や各種専門用語があることを知った。はじめに理論有りきではなく、後で知る類のものである。このことは面白い事実だった。現代的なAI予想による戦況、次の一手の可能性などが画面に表示されている。専門家による解説は、推理小説の手口を探索するようで面白いし、解説ぶりも味わい深い。
将棋には、持ち時間各4時間で、朝の9時から夜までの戦いや、持ち時間各8時間で二日がかりの勝負もある。そのためか、昼と夜の勝負飯が紹介され、おやつの内容までが話題になっている。実に体力を要するゲームである。近年、「体育の日」や「国民体育大会」などの「体育」の用語が「スポーツ」に変更されつつある。これは、ものごとの遂行には、体育、知育、徳育の三点セットが重要なことを反映しており、「スポーツ」という表現の方がより適切だと判断したからである。将棋もスポーツに位置づけられることだろう。
藤井さんと同じく中学生でプロ棋士となり、ひふみんの愛称で知られる加藤一二三九段によれば、将棋の指し手は10の220乗あるらしい。論理プラス直観が有効である。何やら、五七五の十七音からなる俳句が、その単語の組み合わせからなる論理と直観から成り立っていることと符合する。藤井聡太棋聖という実力と無限の可能性を持った人気棋士の出現で、将棋のルール、服装、作法等々、将棋を通じての日本文化を再認識している所である。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
