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2012/05/11
野球のルールは、アメリカの大リーグのルールが基本になっている。そこで、大リーグでルール改正があると、日本も後追いでルール変更が行われる。例えば、今年から大リーグは、ピッチ・クロック・ルールを採用する。投手は、走者がいない時は15秒以内に、そして走者がいる場合は20秒以内に投球動作を始める必要がある。一方の打者は、8秒以内に構えの態勢を取ることが制約条件である。試合時間の短縮につながるとは思うが、投手と打者にとっては、自分の間合いで動作できないのでやりにくくなる。シーズン前の試合を見ていても、選手が苦労している様子がよく分かる。
今回のWBCも、投手の球数制限など、特別ルールが採用されていた。そのような戦いの中で、ちょっとした文化的違いからか、日米の野球の違いを感じた。日本では少年野球の時代から、礼儀作法についてはきつく指導を受ける。この習慣はプロ野球まで生きているようだ。整列して初めの挨拶を行い、試合の終了時に、健闘を称え合って、終わりの挨拶をする。この作法は社会に出ても役立つ。学生時代の就職活動が始まる頃に、ある大学教授は学生にこう助言した。
自分の考えを主張するのは良いことだ。しかし、かってに自分のことだけしゃべっていると、印象は良くない。はじめと終わりはきちんと挨拶すること。そうすれば、この人間は言いたいことを言うけれども、きちんとした人物だと評価してもらえる。大人の発言だとその時思った。その思いは今でも変わらない。私も大学で教鞭をとるようになってから、同じ趣旨のことをゼミ学生に伝えてきた。
ダッグアウト内の様子を見ると、アメリカの床はゴミが散らかっているが、日本はきれいである。清潔感の文化的な違いからだろうか。サッカーのワールドカップで、日本人サッカーファンが、座席周りをきれいに清掃し、選手はロッカールームをきれいに整頓し、折り鶴を置いていったことは、世界の注目を浴びた。野球観戦にも波及しそうな振る舞いである。
大リーグでは、死球を与えた際に、投手が謝ることはないが、日本では投手は脱帽し、謝意を示すのが普通である。この行為は、日本のほうが良いと個人的には思う。今回のWBCで、佐々木朗喜投手の投じた160km以上の速球で、チェコ選手が死球をくらった。TVで観戦したが、骨折したのではないかと心配した。運よく怪我がなくて済んだ。ゲーム終了後に、佐々木投手が日本のお菓子をたくさん抱えて、謝罪する場面がニュース報道であったが、大変ほほえましいものであった。気持ちが伝わり、国際交流の出来事として評判になった。自然な気持ちの表現がよかったのだろう。
私の大リーグ観戦の体験は、三試合で、球場はニューヨーク・メッツのシェイ・スタジアムとボストン・レッドソックスのフェンウェイ・パークの二か所である。日本のように笛や太鼓がなく、補球や打撃の際の球の音が心地よかった。それに比べて、日本の横浜球場で観戦した時、楽器による応援は騒音としか思えず閉口した。
ところが、今回のWBCのような国際試合になると、きわめて日本的なトランペットによる応援が、試合のアウェイ感に対抗して、心強い応援になっていたように思う。ところ変われば品変わるの類である。
日本の優勝セレモニー終了後に、恒例の胴上げがあった。監督の胴上げに続いて、選手の胴上げも行われた。大リーグでは見かけないので、日本特有のようである。その活躍により一躍人気者になったラーズ・ヌートバー選手も胴上げされていた。母親が日本人であるが、日本語がほとんどしゃべれない日系人と胴上げの取り合わせも面白かった。
胴上げで思い浮かぶことといえば、江戸時代の年の瀬の行事である。大掃除、すす払いなどが終わると、店の番頭さんなどが女性軍により胴上げされることが普通の行事だった。女性が胴上げされることもあった。この習慣は江戸城の大奥から始まったとされるが、よくわからない。「胴上げにやり手巾着押さへて居」(江戸川柳)。
ここでは、ルール、礼儀、清潔感、死球、応援、胴上げなど、気づいたことの一部だけをご紹介した。今回のWBCは話題満載で、プロの解説も、素人談議も、共に楽しめる機会を提供してくれた。選手をはじめとして、関係者の活躍ぶりには拍手を送りたい。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
