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ある人物が橘曙覧を絶賛した。「趣味を自然に求め、手段を写実に取りし歌、前に万葉あり、後に曙覧あるのみ」、「歌人として実朝以後ただ一人なり、・・・彼を賞賛するに千言万語を費すとも過讃にあらざるべし」、と言ったのは近代俳句を確立した正岡子規である(『橘曙覧全歌集』解説、岩波文庫より)。さらに、比較的近年に至っては、1994年に当時の天皇・皇后両陛下が訪米した際に、大統領主催の歓迎会が開催された折、ビル・クリントン米国大統領は歓迎スピーチで次の和歌を紹介した。
たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時
(It is a pleasure when rising in the morning I go outside and find a flower
that has bloomed that was not there yesterday.)
ゲスト国の文化に敬意を表して、このような和歌をさりげなく歓迎挨拶に入れ込むのは、スピーチライターの腕の見せ所である。大統領主催の特別な機会なので、日本でも一気に知られるところとなった。この和歌は、橘曙覧の『志濃夫廼舎歌集』(しのぶのや)の中の「独楽吟」に掲載されており、「たのしみは」で始まり、「~する時」で終わる和歌52首からなっている。和歌の内容は日常の暮らしに触れたものばかりで分かりやすく、特に解説することもない。以下にいくつかの和歌をご紹介する。ネットや文庫で、52首を読むことが出来る。
たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時
たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
たのしみはそぞろ読みゆく書(ふみ)の中に我とひとしき人をみし時
たのしみは物識人(ものしりびと)に稀にあひて古しへ今を語りあふとき
たのしみはいやなる人の来たりしが長くもをらでかへりけるとき
たのしみは意(こころ)にかなふ山水のあたりしずかに見てありくとき
それぞれの和歌を通じて、家族、友達との団らんや、読書や散策の楽しみなど、日常の楽しみが伝わってくる。橘曙覧は清貧な暮らしをしていたが、日常の暮らしをたのしさとして受け止め、和歌の形式に乗せ自然体で表現した。コロナ禍では、この日常の楽しみが大分奪われていることを改めて痛感する。
「独楽吟」52首の中から、自分が気に入った和歌だけをいくつか取り出した上で、声に出してみてもよい。和歌の心得の有無や、和歌創作の腕前に関わらず、橘曙覧を真似て和歌づくりに挑戦するのも楽しい。素人である私もやってみたがぼろが出るばかりで、恥をかくこと間違いなしである。読者もどうぞ挑戦してみてください。
たのしみは異なることを組み合わせ新たな意味を見いだせし時
たのしみは食後に志ん生鑑賞ししばしうたたね夢みし時
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
