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将棋の格言の仕事への活用などについては、加藤剛司著『仕事は将棋に置きかえるとうまくいく』などが参考になる。この本の著者は構成作家であると共に、大学の将棋部で活躍された経験を仕事に活かしている。将棋の長い歴史から生み出された、大事な事柄や教訓は格言として引き継がれ、日常よく使われている。例えば、「王より飛車を可愛がり」、「歩のない将棋は負け将棋」、「桂馬の高跳び歩の餌食」、「敵の打ちたいところに打て」、等々、私たちも耳にしたことがある。いくつか解説してみましょう。
「王より飛車を可愛がり」 自軍の持ち駒でもっとも大事なのは王様(自軍は「王」で、敵軍は「玉」と表現)であるが、得てして大駒である飛車や角を大事に守りすぎるきらいがある。組織で言えば、組織の存在理由や関係者を大事にすることが肝要なのに、個人や自分の部署の保身に走り、本筋を見誤り、本末転倒してしまうことが起きがちである。危機対応などで、真実を隠蔽しようとする行為が、逆に組織の存亡問題にまで発展してしまうことはしばしば発生している。
「歩のない将棋は負け将棋」 将棋の駒の中で、歩は通常では一番弱い、一兵卒の駒である。ところが状況によっては歩が大活躍する。相手に意図的に取らせて、良い形を作る「捨て駒」としての活用、金の下の歩の存在がセットで強固な守りとなり(「金底の歩 岩より堅し」)、歩が成ることにより(「成金」、「と金」)、価値の高い金と同じ機能が果たせるようになる。たかが歩と馬鹿にしてはいけない。
会社では平社員であり、たまたま配置された職務には向いていなくても、その社員の特性に合った業務内容の職に就けば力を発揮してくれるかもしれない。隠れた才能の持ち主は多いもので、宝の持ち腐れになっている恐れが大である。中には高度な資格を新たに取得することにより(将棋の世界ならば「と金になる」こと)、専門職として将来活躍の場を、組織の内外に持つことだってありうる。
「桂馬の高跳び歩の餌食」 桂馬はジャンプしながら、斜め前方に進むことが出来る。危険もあるが身軽さが特徴である。ところが調子に乗りすぎると、失敗の恐れが出てくる。組織ならば、身軽さと手堅さとをうまく調整することが大事である。
「敵の打ちたいところに打て」 敵が打ちたい場所は、自分自身にとっては弱みの場所である。そこで、逆にこちら側でその場所をふさいでしまえば、敵の有利さを消すことが出来る。実社会でも弱みを強みに替える工夫は大事である。
将棋に学ぶ教訓・格言は多数あるが、きりがないので以下省略する。将棋を実際に指す人もいれば、将棋を観戦して楽しむ人もいる。もっぱら観ることを楽しむ将棋愛好家のことを省略して、「観る将」という。観る将の一人として、以下将棋の面白さをいくつか指摘したい。
・羽生善治棋士(永世七冠の資格保持者)の談話によると、将棋の要諦として直観、分析、大局観の三つの観点を組み合わせ、指し手を選ぶことが大事とのこと。ひらめきから目的設定などの企画を立て、分析、感性、統合化、実施、評価に至る一連のプロセスは、実社会におけるプロジェクトの基本に通じるものである。
・何て先まで読めるのか。序盤、中盤、終盤、そして残り時間などにもよるが、棋士は一手につき約30通りのパタンを想定し、その内の2,3通りについて深く思考するようである。羽生「直線的には20から30手先まで。途中分岐する所まで含めれば総合すると300から400手」ということになりそうである。AIによると、何億手先まで読んで、好手は何かを示している。二日がかりの勝負もあるので、「持続する思考力」が要求される。
・将棋は、王様を取ると勝負は終わるが、実際には王様を取る所まではやらない。王様が取られる前に、敗者となる棋士が、「負けました」(投了)と敗北宣言をすることにより、勝負は終了する。勝負には「終わり方の美学」がある。人生における活動の終了の仕方をどうするか、人生にも「終わり方の美学」がありそうである。
・勝負がつくと、その後に「感想戦」があり、戦った両者が戦いの振り返りをする。お互いの技量向上を目指す姿は潔い。仕事の各段階で進捗状況を振り返り、チェックしながら進めることは必須である。人生を振り返れば、「私の履歴書」になる。
観る将のための便利な道具として、将棋のテレビ番組、ネット中継の将棋番組と解説、その他がある。これからも将棋の文化史を中心に楽しんでいきたいと思う。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
