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重箱の隅をつつく、といえばあまり良い表現ではないが、重箱の隅に穴をあけるぐらい、念には念を入れる取り組み姿勢が彼の真骨頂である。それで彼は研究仲間内でも高い評価を得ていた。そんな彼から、私が当時所属していた東北大学理学部の研究室に電話がかかってきた。もうずいぶん昔のことである。
電話の内容は次の通りであった。ある有名な論文があるが、引用者によってその発行年が異なっている。そこで、当該論文の正確な発行年を確認するために、東北大学理学部図書館が所蔵している海外の学術雑誌を複写してほしいとの依頼である。世界で一流の学術雑誌を所蔵していることは大学にとって宝となる。早速複写して彼に送付したのだが、私も興味がわいたので、論文刊行のいきさつが分かる部分だけを読んでみた。
読んでみたら、異なる発行年についての理由が分かった。つまり、この論文は、著者が学会等の集まりで講演したものが活字化されてできたのであった。学会が12月に開催されて論文内容が口頭発表され、翌年発行の雑誌に活字となって掲載されたのだった。その事実を確認せずに引用者が発行年を記載するので、二種類の発行年が発生し混乱が生じていた。とりわけ、引用の引用などと連続すると訳が分からなくなる。意図的に誤った情報であるフェークニュースの伝播みたいなものである。分かってしまえば何でもないことではあるが、大事なことは、現物に当たって確認作業を実施するかどうかである。現場、現物の確認作業の重要性は、私にとっても良い教訓となった。
ものごとを進めるにあたっては、証拠や根拠を示すことが大事である。事件解決のためには、証拠物件、目撃者の証言、音声や画像データ、DNA検査などの科学的分析に加えて、状況証拠や当事者心理などを把握することも必要である。根拠を示すためには、それぞれの分野で作法がある。研究分野ならば研究の方法、段取りがあり、問題設定、データ、分析手法、結果、解釈などの分析の手順がある。
数年前に社会問題となったSTAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞と訳されている)の事件が記憶に新しい。刺激によって新しい細胞が誕生するかもしれないとの報道に、世間の注目が集まったのだった。研究の世界ならば、データの信憑性を示すものとして、実験ノートを用意しておくことは常識である。データの再現性のチェックも欠かせない。同じやり方で再現できるかどうか世界中で追試が行われた。再現できなかったので、STAP細胞は世界で承認されなかった。
ビジネスや家庭で、そして日常の暮らしにおいて、当然ながらものごとには段取りがあり、それぞれの理由、根拠がある。なぜこのような仕組みになっているのか、どうしてそのような気持ちになるのかなど、その根っこに当たる事柄について再考することが大切である。子供が、「なぜ、どうして」と質問攻めにすることの大人版と考えるとよいかもしれない。自分の分野において、何を根拠にそのように仮定し、論理づけ、結論を導き出しているのか、改めて見直してみる習慣を心掛けたいものである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
