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外国向けのNHK衛星テレビ放送番組で、数回にわたり日本の武道を話題に取り上げ放映したことがある。その番組中で、とくに剣道を特集した際の冒頭の場面は忘れられない。それは高校生の剣道試合であり、誰の目にも明らかな見事な面が入った。審判長は「一本」を宣言するところであるが、審判協議となった。審議の結果、一本の判断は取り消された。何があったのだろうか。
映像を見てみよう(ウェブサイトで探してください)。闘いが済んで、お互いに終了の礼をする直前に、面を入れた選手が、応援席に向かって、ほんの少し握りこぶしで勝利の喜びを表した。この動作が剣道をする者としてふさわしくないと判断され、一本を取り消す理由となった。ただ勝てばよいというのが日本武道ではない。勝者にふさわしい態度も要求されるのが、日本の武道の特徴である。日本の武道と西洋のスポーツとの違いを明瞭に物語るものであり、日本の武道の真髄の一端を示しているので、番組の冒頭に入れたのだろう。
一流選手の談話などは、武道に限らず、スポーツ全般において名言が尽きることがないし、人生訓としても参考になる。例えば、弓で的を射る際に、目標とする的に対して、射る人の気持ちが行き勝ちである。それではいけないのであって、的の先の真実を射るように心掛けなさい、というのが弓道師範の指導である。
的の先といえば、アメリカの大リーグ野球で300以上の勝利数をあげたロジャー・クレメンス投手は、キャッチャーのミットの先を目掛けて投球することを心掛けていた。また平泳ぎの北島康介選手はオリンピック大会で連続して金メダルを獲得しているが、その勝因の一つに、実際のゴールよりもゴールが先にあることを頭の中に想定してゴールタッチすることを、平常時の水泳練習の際に行っていたことが指摘されている。これがタッチの差を生み、金メダルにつながったのである。クレメンス投手、北島選手のいずれの場合も、的の先の意識の大切さを物語っている。
武道やスポーツに限らず、日頃の活動において、私たちは、どのような振る舞いが適切なのか、そして目標をどこに置いたら良いのか。一流選手や秀でた人たちに学びながら、私たちの生き方に活用したいものである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
