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その一。エレベータが混むことや、またある時は素通りしてしまうことがしばしばある。そんな時に、待っている人の気持ちはますます苛立つものだ。エレベータ混雑の問題を解消するためには、エレベータの増設を考えその費用と効果を分析する、何階置きか飛び飛びに運行する等いろいろな方法が考えられる。次のような解決策もありうる。廊下の壁に鏡を据えつければ、待っている間にネクタイを直したり髪型を整えたりと、何かをすることになる。そうすれば、人々が待っている時のイライラを、ある程度は緩和もしくは解消することが安上がりにできる。これは、ソフトな問題解決手法の応用の一例である。
その二。10年近く前になるが、リスク・コミュニケーションの調査研究のために、研究仲間とスウェーデンに出掛けたことがあった。その時の我々の宿泊先のホテルで、友人がエレベータを待っていたところ、後から来た日本の大手企業社員数名が入口をブロックして、その会社の会長(相談役だったかもしれない)を先に乗せてエレベータを上昇させた。私はもちろんその人物の顔と氏名を新聞紙上等で知っていた。怪しからん話で、友人は血相を変えて怒っていた。怒るのももっともだ。私は少し離れた所から一部始終を目撃したので、いつかその会社の部長をしていた友人に注意しようと思っていたが、いつの間にか時が経過してしまった。数か月前だったか、その会長氏の死亡記事を経済新聞で目にした。ちょっとした社員の不作法が企業イメージを落としてしまう一例である。
その三。ある日エレベータに乗り込み、すぐに自分で階数ボタンを押したところ、「私がやりますから」と、若い女性に睨まれてしまった。その若い女性はエレベータ係員だった。私はまったく悪気はなかったが、うかつなことに、そのエレベータがエレベータ係員同乗の様式であることに気がつかなかったのである。「あ、すいません」とは言ったものの、少し申し訳ない気持ちで一杯だった。気付かなかったこととはいえ、結果的に、その人の職分を奪い、彼女の心を傷つけてしまったかもしれないからだ。最近は、係員のいないエレベータが多いので発生した出来事だったが、うっかりした行動や発言には気を付けたいものだと後悔し、その後の教訓にした。
たった数秒間とは言え、エレベータという閉じた空間は、別の意味ではアイディアに富んだ空間だ。各人にとってのエレベータ物語は、毎日、世界中の建物内で展開中である。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
