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アメリカの女流陶芸家ロリスさんが来日することになり、彼女から、浜田先生に会いたいが可能だろうかとの依頼があった。浜田さんは、海外からも国王や大臣クラスの人が訪ねるような有名人だったから、難しい依頼を受けたものだと思った。やるしかないので、直接栃木県益子の浜田庄司さん宅を訪ねることにした。門に着いたところ、茅葺の立派なお宅が目に入り、廊下を歩く浜田さんを発見。奥様が出ていらしたので、主屋の玄関の所で、遠いアメリカからやってきたので、是非面会の機会をいただきたいとお願いした。奥様からは、突然来る人ばかりで困ると叱られてしまった。まことにごもっともなことで、こちらは小さくなるばかりであった。しばらくすると、浜田さんが我々の方に来て下さって、「先客があるので、少し待っていただければ」との有り難いお話であった。玄関で立って待っていると、その後間もなく、「そこで立っているのもなんですから、ご一緒でよろしければ」と、我々を囲炉裏端に招き入れてくださった。浜田さんの大人の振る舞いには大いに感心した。
かつてイギリスから来たジャーナリストに対して、浜田さんが大皿に釉(くすり)の流掛をやって見せたところ、「たった15秒」と言われてしまったので、「プラス60年」と浜田さんがいったら、同席した友人の陶芸家バーナード・リーチが「うまい!」といった話など大変興味深かった。この話は自伝でもある『無盡蔵』にも記されている。浜田さんは、主屋内の部屋で、イギリス滞在時に収集した家具を見せてくださった。これらが浜田さんの作風のベースになっていることを強く感じた。また開館直前の益子参考館などを案内してくださり、まことに贅沢な時間を過ごすことができた。ロリスさんもアメリカに帰ってから、陶芸仲間に対して、高名な浜田庄司さんに会ってきたという自慢話で鼻高々だったらしい。
浜田さんが作品の売り上げを原資にして次々に購入した、主屋、作業場、展示館などの茅葺きの建物群、またイギリス滞在時の家具等の多数の収集物、さらには経験にもとづく言動などは、大変印象深くかつ人生の示唆ともなった。浜田さんのように、「プラス○○年」と言えるだけの、豊かな人生経験に裏打ちされた中身をぜひ持ちたいものである。私自身が20代の時に秀でた人にお会いできた経験は、いまから思うと人生の宝物だった。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
