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(2013/06/01)
賃金格差、地域格差、温度差など、とかく格差や差は、あまりよい印象をもたらさないようだ。差には、時間的な変化に伴う差、地域的な差異からくる差、量的な差、質的な差など、いろいろなものがある。今回は、差の持つ効用について考えてみたい。
今は東京へのオリンピック大会誘致活動の真最中であるが、日本のバレーボール界は戦術の革新に富んでおり、世界に先駆けていつも何か工夫している。日本代表女子チームの真鍋監督は、試合中にPCを手に持ち、戦況を把握しつつ、作戦を立て指示している。日本女子チームは、世界に先駆けて回転レシーヴを、そして男子は時間差攻撃を開発した。時間差攻撃とは、セッターとスパイカーが示し合わせて、スパイカーが飛び上がる時間を少しずらすことで、相手のブロックをかわす戦術の一つである。さらに進んで、一人時間差なるものまでに進化した。野球のピッチャーによるチェンジアップは、速度や球筋の変化を通じて、打者のタイミングを外すのに効果的な投法の一つとなっている。スポーツの世界では、タイミングを外すこと、つまり時間差の活用は有効な作戦の一つなのである。
一般的に、差は流れや動きをもたらす働きをする。水は高い所から低い所に流れるが、これは高低差に伴う物理現象である。部屋の温度も、温かい空気は上昇するので天井付近は高く、足元は冷たくなる。これは室内空気の循環であり、もっと広げて地球規模にすれば大気の循環ということになり、世界の気象予測に影響する。先進国から発展途上国への経済展開は、「トリックルダウン」(滴が上から下へ垂れるような効果)と呼ばれたが、地域間の所得格差は、より高い賃金を求める労働者の地域間移動をもたらす。社会的に影響力のある人の発言は、社会へ多大な影響をもたらす。昔はオピニオン・リーダーなる言葉があったが、最近はあまり耳にしない。「つぶやき」の方が力を持ちそうなので、何が何だかわからない混沌の時代になっているようだ。自然も、資金も、労働力もそして情報も、高い所から低い所に移動することで帳尻が合う仕組みになっている。
自然現象ならば、安定と不安定、そして安定の繰り返しになる。自然現象の制御はほとんど困難なので、私たちは自然をよく観察し、自然の原理にうまく適応する方策を考えた方がよい。社会現象ならば、安定状態を意図的に揺さぶって動きを生み出し、新たな展開を仕掛けることは、よくあることである。その仕掛けが成功するか、失敗するかは誰にも分からないことであり、だから世の中面白いともいえる。
差を活用したビジネスには、東から開いてゆく世界の為替市場、高値で取引される初物、高度差を活用した高原野菜などの作物の供給、休祭日営業、夜間や深夜営業等々いろいろある。大学の場合だと、社会人向けの大学院を提供しているが、午後6時以降や土曜日を活用している所が多いようだ。時間と場所からはかなり自由になれる放送大学や、ウェブサイトを活用した地球規模のものもある。差を活用したちょっとした工夫が人々に素材や機会を提供し、価値を生み、人々の気持ちをつかみ、財布をつかむことにつながるのである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
