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数学者の岡潔さんは文化勲章受賞者であり世界的な数学者の一人であったが、岡さんの随筆もよく読まれている。数学の論文だったら一行も読めそうもないが、随筆なら素人でも読めるし、その内容は興味深い。岡さんが強調することの一つに、「情緒」の大切さがある。数学者が情緒を強調するのはどのような事情からなのか。岡さんの言葉をその著書から引いてみよう。
「人の中心は情緒である。情緒には民族の違いによって色々な色調のものがある。たとえば春の野にさまざまな色どりの草花があるようなものである」
「数学とはどういうものかというと、自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つであって、知性の文字板に、欧米人が数学と呼んでいる形式に表現するものである」
岡さんの主張を要約すると以下の通りになる。数学者は論理思考の専門家であり、論理的な推論が重要だと思われている。重要なことは確かであるが、論理的な推論に入るためには、より適切な「仮説」をあらかじめ立てる必要がある。その仮説を立てるためには何が必要か。芸術、デザイン、歴史、その他私たちの情緒を豊かにするための素養が肝心なのである。その豊かな素養から仮説はつくられる。仮説が設定できたら、その後は、数学者が得意とする論理的な推論過程を粛々と進めれば良い。すると、きっとよい結果が得られることであろう。
ノーベル物理学賞受賞者のハイゼンベルグがマスメディアからの取材に答えて、日本人物理学者の論文には、研究者の自然観、宇宙観、宗教観などが感じ取れると話していた。物理学の論文に国民性が反映されているとの指摘には驚いたものである。また、アメリカの大学教育が、リベラルアーツ(教養科目)を重視していることも注目に値する。これらはみな、ものごとの源泉にかかわることである。
「情緒」が重要なことは、数学の世界に限らず、ビジネスの世界だろうが他の世界だろうが同じだと言いたい。アイディアの源泉は、まさに人々の心の情緒から出てくるものなのである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
