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最近の統計データによれば、日本酒消費量の減少とワイン消費量の顕著な増加が明白である。ワインについては、赤ワインに含まれるポリフェノールが動脈硬化対策に良いとのことでブームになったことがあり、その後日本に定着した。ある医者の解説によると、赤ワインはぶどうの果皮も含めて製造される。ぶどうの皮は、太陽光線に対しての対抗力を持っている。だから私たちの健康に良いとの説明だった。1990年代の初めを境に国産ワインを輸入品が上回るようになり、現代では70%程度が輸入品である。
ある夏の日、ドイツの大学教授と一緒に、ハイデルベルグ近くのワイン醸造元を訪ねたことがある。試飲をして、好みのワインを箱単位で購入するという。私も試飲に預かったが、醸造元で飲むワインはさすがにうまかった。ワインそのものの味に加えて、乾燥したヨーロッパの気候条件も、ワインをよりうまく感じさせる要因なのだろう。値段も比較的安く、なるほどヨーロッパではワインは水替わりと言われるだけのことはある。車中で、ワインに関するエピソードを聞いた。ドイツの軍隊では、ワインを飲むことが義務付けられているという。兵隊さんは体力が基本である。もし食べたものが当たって体調不良となれば、戦どころではない。そこで、解毒作用のあるワインを義務として飲むという。なるほど、なるほど。
その昔、イギリス人宅に家族で招かれ、食事をごちそうになった。その際に、ワインを温めた飲み物が出てきた。ホットワインという。当時、日本では温めたワインを飲んだことがなかったので、少し驚いた。今では、日本でもホットワインを飲む機会もあるので、珍しいことではなくなった。タイムズという良質とされる新聞を読んでいたら、面白い記事に出会った。日本の百貨店がイギリスのワインを輸入し販売するという。イギリスはワインの本場には程遠い国なので、当地の新聞記事になった。イギリス人もさぞびっくりしたことだろう。その後の売れ行き結果はどうだったのだろうか。イギリスでは良質なワインが作れないので、おのずと外国からの輸入品に依存することになる。すると、輸入する立場からは、「利き酒の能力」が問われることになる。よって利き酒大会を行うと、イギリスから優勝者を出したりする。これなぞは、普段気づかない点であるが興味深い。
日本酒もそうであるが、ワインは食事によく合うと言われている。ワインには塩の一種である高濃度カリウムイオンが含まれているので、濃い目の味を求めることにつながる。このことが食事とワインとの結びつきになるのだろう。日本人には塩辛と日本酒の取り合わせと考えれば分かり易いかもしれない。ワインの品質差の要因は、重要性の順に、醸造家の腕と意図、原料ぶどうの品種、産地の気候、年ごとの天候、ぶどう畑の土壌、ワインの熟成期間となるとのこと(ワイン評論家のヒュー・ジョンソンによる)。地理学者の私としては、気候と土壌の環境要因に強い関心を持つ。似た事例として、アジサイの色彩の違いがあり、土壌の酸性度の違いによることが分かっている。ワインの品質の違いを知るためには実地調査が必要だ。これで出張理由ができる。
ワインの品質差の要因は、私たちが社会でよりよく生きて行く上で、何を備えておけばよいかを示唆しているようだ。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
