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スピーチと何とかは短いほどよい、とはうまく言ったものである。近頃は、どの集まりに出ても、皆さんのスピーチが格段に上手になったと思う。スピーチの機会が増した上に、スピーチの重要性が理解され、話し手がスピーチを工夫するようになったからかも知れない。「無駄口は叩くな」、「口より体を動かせ」、といった根性重視の昔の時代とは様変わりである。今回はスピーチの話題を手短にしてみたい。
スピーチの基本は何かと考えてみると、話し手(スピーカー)、伝達内容、聞き手の存在があり、関係者の姿勢(話し方、聞き方、催し方など)、目的、持ち時間、開催の時期や場所、そして会場の雰囲気などの要素がスピーチ効果に影響する。重要な会合でのスピーチともなると、特別に原稿を書く人(スピーチライター)が必要になる。米国大統領などの国家元首ともなれば、その発言内容は世界的にも歴史的にも重要となるので、記録に残す必要がある。大統領チームが、スピーチライターによる原案をもとに推敲し、完成した原稿を大統領が読む形式をとることがほとんどである。スピーチには、公的な会合での挨拶、政治家の演説、学者や文化人による講演、成果の発表などがあるが、これらは通常は用意した原稿を読み上げることが多い。一方で、内容をあらかじめ頭に入れて置き、より感情表現を加えたものに結婚式、葬式などの冠婚葬祭のスピーチなどがある。
私の経験上、会社などの組織で、社員教育で効果のある「3分間スピーチ」を導入することをお勧めする。3分という時間制限の下で、簡潔に話の要点を押さえて、しかも的確に伝達する技術を体得するよい機会となる。多くの人のスピーチを見聞きすることが、自身のスピーチの向上にも役立つ。企業の社長や経営陣が行うスピーチに期待したいのは、長話でもなく、自慢話でもなく、お国自慢でもない。組織の目指すべき方向性を示す大きなヴィジョンと、組織が置かれている厳しい環境に対する危機感である。ヴィジョンと危機感の二つを強調することが、トップの役割なのである。英語では、’Direction-setter’(「方向づけする人」)と呼んでいる。
作家の丸谷才一はスピーチの名手として知られるが、必ずスピーチ原稿を用意した。私もある食事会の集まりで、丸谷さんのスピーチを聞いたことがある。そのまま活字にしても大丈夫な内容だった。そのお蔭で、どのようなスピーチ内容だったかを、彼の何冊かの挨拶本とでもいえる書物で、後によりよく知ることができた。丸谷さん程の人でもあらかじめ原稿を用意するのだから、私たちが見習うのも一法、独自路線で行くのも自由である。
現代では、ネット上で世界中のスピーチを映像で見聞きすることができる。ケネディ米国大統領、キング牧師、ノーベル平和賞のマララ嬢、その他多くのスピーチが有名である。そういえば、大英図書館の売店で、文学者、科学者などの声を収録したディスクをプレゼント用に二組購入したことがある。一つは恩師に、もう一つは教え子にプレゼントした。写真で顔は知っていても、どんな声だったかはなかなか分からないので興味深い。近年では、スピーチからプレゼンテーションという言葉に取って代わられつつあるようだ。ただ内容を伝えるだけではなく、より上手に表現して、効果性をもたらすことに力点が移りつつあることの証左である。プレゼンテーションについては、いつか稿を改めて検討してみたいと考えている。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
