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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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モデル
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モデルという言葉を耳にした時、皆さんは何を連想するだろうか。ファッション誌を彩るような体型のスーパーモデル、持てたらよいなのモデル住宅、台風コースを予測する気象モデル、当たるも八卦の経済予測モデル、その他さまざまなモデルがある。

各分野におけるモデルが意味するのは、理想、模型、自然や社会現象を模したものであることが分かる。これら便利なモデルについては、モデルなるものが何なのかを理解しておくと、ものごとを考える上で役立つ。モデルとは、現実の本質を的確に表現したものである。現実を構成している要素と要素間の関係などを簡潔に表現することが肝要である。そのためには、現実の何を対象にして何を大事なものと考え抽出するか、それらがどのような関係になっているか、などの理解力が求められる。そして、それらの要素をうまく組み立てることがモデルづくりに通じることになる。例えば、東京湾内での多数の船舶を実際に動かす(実験)としたら大変な費用と混乱が予想される。ところが、一度船舶航行シミュレーションモデルが構築されると、コンピュータのモデル内でいろいろな仮想実験(シミュレーション)ができるので、操作性と費用の点からも都合がよい。

私の研究分野では地図が良く使用されるが、これは地図モデルと呼ばれている。地図には、山川、田畑、工場、公共施設、商業地などの現実の世界の情報が満載である。それぞれの要素は記号で表現され、いくつかの約束事のもとに出来上がっている。とくに縮尺の考え方が重要であり、現実の規模が縮小されているからこそ、手に持てる大きさの用紙(地図)にうまく収まる。現代では手のひらサイズの端末機器にも搭載されている。自動車に搭載されている「カーナビ」(自動車運行システム)が一般化している。これは人工衛星による全地球測位システム(GPS)と連動して、自動車の位置情報が瞬時に分かる仕組みである。今時だとカーナビ無しでは運転できない人も数多くいることだろう。各種の地図があるが、地図の基本は、位置、方向、縮尺であり、約束の記号により表現される。

ビジネスの世界ならば、ビジネスモデルが馴染みの言葉になっている。世間であまり注目していないもの(対象となる要素)に着目し、アイディアをひねり(組み合わせ)、システム化(仕組み)、商品化(収支計算)し、社会に受け入れらるように(社会化)した人は実に偉いものだと感心する。時代も変わるし、人々の価値観や環境も変わるので、ビジネスモデルは絶えず変化せざるを得ない。初めて出現した際は、画期的であったビジネスモデルも次第に陳腐化する。その頃には、次のビジネスモデルが登場し、競い合う。

私も学生時代に理容モデルをつとめたことがあるが、これは理想的だったのか、はたまた実験台だったのか、その他何だったのかは今日に至るまでよく分からない。しかし、私がモデルにならなければ、一人の理容師が誕生しなかったことは確かである。少しはお役に立ったのかもしれない、と今では思っている。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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