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2012/05/11
東京の中心である銀座に後れを取っていた感のある日本橋であったが、近年では新しい建物が建設され、元気さを盛り返しつつある。「お江戸日本橋七つ立ち・・・」、今回は東京の日本橋(にほんばし)を話題に取り上げる。「東京の」とわざわざ断ったのは、大阪の日本橋(にっぽんばし)があるからだ。
私の子供時代の楽しみといえば、都電に乗って終着駅の日本橋で下車し、百貨店巡りをすることであった。国内外の上等な品物が沢山あるし、見て回る分にはお金がかからない。百貨店には、文字通りに何でもあるという印象があり、屋上は遊園地になっていたので、子供たちにとっては楽しい空間だった。おやつにホットケーキでも食べられればそれで十分に満足だった。そんな日本橋も老舗の店や百貨店はあるものの、業務地区であったためか、何となく若者が集まるという街ではなくなっていた。
ところが、ここ数年この地の都市再開発が進み、一気に魅力的な街になりつつあるのは喜ばしい。本来ならば、この地区は、土地面積当たりの建物床面積の割合である容積率が700%だったのだが、500%を増した1,200%の容積率が認められ、高層建物が実現した。開発する企業にとっては、建物床面積が増えることにより積極的な提案を実現できるし、時の政府の都市政策などの追い風とともに、公共空間も確保されるので、一般人にとっても歓迎である。都市開発の分野では、「インセンティヴ・ゾーニング」(容積割増制度)と呼んでいる。
日本橋は、東海道をはじめとする主要街道の出発地点であった。そこで、この界隈には江戸の町割、橋、通り、店、娯楽など、特色のあるものがいくつもあった。例えば、日本橋、江戸橋などの橋、魚河岸、薬種問屋、紙店、十軒店(人形店)、三井の越後屋呉服店(現在の三越百貨店)、松尾芭蕉が住んだ所、等々。近隣には、石町の時の鐘、芝居小屋、吉原などもあった。考えてみると、徳川幕府が三百年近くも続いたのだから、それなりの産業や文化遺産があって当然である。手元にある川柳の本で日本橋にちなんだものを探すと、すぐ見つかる。
「ふる雪の白きをみせぬ日本橋」
前句に「にぎやかな事にぎやかな事」とある。
「日本橋何里何里の名付親」 日本の道路原点となっている。
外国では、「ゼロポイント」といい、
ロンドン(トラファルガー広場)
パリ(ノートルダム寺院)
マドリッド(太陽の門広場)
などの原点探しも楽しい。
「夜と昼朝とへ落る日千両」 夜は吉原、昼は芝居そして朝は魚河岸。一日に千両もの大金が日本橋に落ちたということで、まことに賑やかなことであった。
「ごふくやの切り通しからふじか見え」 三井の越後屋と富士山の取り合わせは、広重の駿河町の浮世絵で有名。「ふじか」は、「富士が」と読む。
「ふくろ丁ともいひそうな三丁目」 薬種問屋が多く、薬の袋が沢山ある本町三丁目。
「通り町ずつずと行ときんり様」 通町の北側にお雛様陳列の人形店があった。
「木綿店やねにねりべい少シあり」 大伝馬町の商家は、練塀でできた「ウダツ」で隣の店と仕切っていた。「ウダツが上がらない」のは、立派な商家でないという意。
再開発地区の真ん中に、千年もの歴史のある神社が整備され実現している。鎮守の森は日本人にとっての馴染みの空間で、自然と聖なるものが融合した空間となっている。歴史的、文化的な側面を取り入れている都市再開発はなかなか良い。
「日本橋どこへゆこふがすきな所」
私にとっては、日本橋は子供時代から馴染んだ場所であり、また社会人として始まった所でもあるので、私の原点ともいえる。日本橋を語りだすとどうしても贔屓目になってしまうのは、しょうがないことである。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
