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事件の1週間後に、ある全国紙の川柳欄に掲載された川柳が物議をかもしているが、それも余波の一つである。どのような川柳だったのだろうか。7月16日付の新聞には、元論説委員だった選者によって7句が選出、掲載されたが、その7句のいずれの句も安倍元首相には厳しい立場からの川柳だった。とくに9月に予定されている国葬批判である。ここに三句ほどご紹介すると、「疑惑あった人が国葬そんな国」、「死してなお税金使う野辺送り」、そして星印のついた句は、「忖度はどこまで続くあの世まで」であった。
川柳は批判、風刺などを得意とするが、笑いやユーモアに包まれている所に特色がある。賛否両論があるにせよ、非業の死をとげた政治家を川柳で表現するのには難しさが伴う。どのような作句をしても、さまざまな意見がでてくることだろう。私が思い出す川柳としては、江戸幕府最後の将軍徳川慶喜の逝去に伴う句がある。作者は現代川柳中興の祖と称される井上剣花坊(明治3年生まれ)で、「慶喜公薨去の号外」との前書きのある句だった。
冬枯れに江戸を葬る鈴の音 井上剣花坊
少し背景をご説明すると、江戸時代最後となる第15代将軍徳川慶喜が亡くなったのが、元号が明治から大正に変わった大正2年の1913年11月22日のことだった。鈴の音は新聞売り子が呼び売りで使う鈴の音のことである。当時は市街電車の停車場や主要交差点などで新聞の売り子が新聞を売っていた。
徳川慶喜の場合は国の政治体制が変わり、失脚、退陣したのであり、感冒のため逝去した。井上剣花坊の句は、かつての将軍(敗者)の逝去にささげる温かい気持ちが言葉として表現されており、スマートである。人の「死」に因む川柳として有名なのは、次の句である。江戸時代の句であるが、現代でも通じる。
津波の町の揃う命日 『武玉川』
ここには、津波という厳しさを伴う自然災害で、身近な人々を一瞬にして失った作者の深い悲しみがある。最後にご紹介するのは江戸の戯作者十返舎一九で、川柳ならぬ狂歌で、軽妙に「死」を詠んでいる。
この世をばどりゃあお暇(いとま)に線香の煙とともに灰左様なら 十返舎一九
私たちは、自分の死と他人の死とを含め、「死」をどのようにとらえ、どのように表現したらよいのだろうか。夏休みの宿題は未だ終わらない。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
