77th Anniversary 〜すべてのありがとうをかたちに〜
  1. ホーム
  2. Men’s Life Style
Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

艶肌コラム

技術の心 心の技術

記事一覧

2017/04/28

長崎への旅

2017/02/27

詩の活用

2017/01/31

二月

2016/11/29

自然観

2016/09/28

新宿末広亭

2016/09/02

補助線

2016/07/30

思い込み

2016/06/02

企画書

2016/04/27

台湾への旅

2016/02/26

解釈の違い

2015/12/29

人生の節目

2015/11/30

探索学習

2015/10/29

お馬の運動会

2015/09/30

ルール

2015/08/31

幕末の京都

2015/07/30

地図の愉しみ

2015/03/31

社会人入試

2015/02/27

スピーチ

2015/02/04

お江戸日本橋

2014/12/28

関心

2014/12/01

モデル

2014/10/30

君が代

2014/08/29

ワインの話

2014/02/01

転職 (2014/02/01)

2013/12/01

10円

2013/11/01

と言えり

2013/10/01

肩書き

2013/06/03

差の効用

2013/05/01

システム思考

2013/04/01

木配り

2013/02/04

氷山モデル

2012/11/01

プラス60年

2012/10/03

制約条件

2012/09/04

氷が解けたら

2012/08/03

的の先

2012/05/11

四月

と言えり
2013/11/01
と言えり
(2013/11/01)

私は東京で生まれ育ったので、西日本にはあまり土地勘がない。そこで、ここ数年のことであるが、西日本で用事がある際には、意識的に寄り道をして各地を見て歩くことにしている。ある時、大阪に行く機会があった。仕事の後でぜひ立ち寄りたかったのは、私が所属した慶應義塾の創立者である福澤諭吉が誕生した場所と学んだ場所である。

福澤諭吉(1835-1901)は、日本の啓蒙家・教育家として有名であり、幕末から明治にかけて活躍した。江戸と明治の二つの時代に生き、まさに一生で二つの人生を経験した。『学問のすすめ』や『福翁自伝』などの著作はベストセラーになっている。現代でも多数の読者がいるが、若い人には現代語訳の方が読み易いかも知れない。父親の出身地である中津藩の蔵屋敷が大阪中之島にあったので、福澤諭吉はこの蔵屋敷で生まれ、そこに住み、その後中津に暮らした。現在は、中之島の小さな空間に石柱の記念碑がいくつか建っている。福澤諭吉誕生地・中津藩蔵屋敷之跡の記念碑には、次のように記されている。

天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ 人ノ下ニ人ヲ造ラズ  (A)

日本人なら誰でも知っている有名な言葉であるが、この言葉は福澤の『学問のすすめ』の冒頭のセリフから採られている。『学問のすすめ』を紐解くと、次の文章になっている。

天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ 人ノ下ニ人ヲ造ラズ トイヘリ (B)

(A)と(B)の相違点は、(B)には、「トイヘリ」(と言えり)の四文字があることである。福澤は(A)の言葉が自作ではなく、他の人が言っている、つまり誰かの言葉を引用していると明記している。福澤は正直な人のようだ。したがって、福澤以外の人たちが、あたかも福澤の言葉として間違って使ってきたということになる。この記念碑も例外ではない。引用の引用は間違いの元になりやすいので、原典に当たることは大切だ。

一方、福澤が学んだ場所は、医者の緒方洪庵が先生だった「適塾」である。第二次世界大戦で空襲に遭った大阪ではあったが、適塾は奇跡的に焼けずに江戸時代そのままに残っている。現在は大阪大学の管理のもとに一般公開されている。適塾に学んだ塾生の名前を見ているだけでも、日本の近代化に貢献した人の名前を多数見出せる。若き俊秀がここで学んでいたのだと感じるだけでも訪問する価値がある。しかも、当時の町家や商家の感じも体験できる。

原典に当たり、現物を見ることの大切さは、ビジネスの世界における現場主義、現物主義、などに通じる。「○○○」と顧客が言っている、営業が言っている、社長が言っているなど、言っていることのどれが正しいことなのかはなかなか分かりにくいものである。本当にそうなのかどうかを確認するために、二重三重のチェックが欠かせない。福澤諭吉ゆかりの地訪問は、寄り道のすすめ、現場の重要性など、いろいろなことを教えてくれた。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
他のコラムを読む 艶肌コラム 技術の心 心の技術

いつご来店頂いても、心地よくお過ごし頂ける様ヘアサロン大野グループでは10のお約束を実施しております。大野がご用意させて頂く非日常のプライベートルームでどうぞゆったりとお寛ぎ下さい。

大野WORK
大野HOBBY