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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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気になることば
2020/06/30
ことばの使い方は実にむずかしい。私は着物などを掛ける「衣桁」のことを、子供の頃は「えこう」と呼んでいた。「えもんかけ」などのことばの響きに引きずられたのかもしれないが、父がそう言っていたからである。耳にした音が、漢字より前にあったということである。後年、漢字でどのように書くのかを知ってからは、「いこう」と正しく言うようにしたが、「イ」と「エ」は間違え易い。

ある時、銀座育ちの国文学者である池田弥三郎さんの随筆を読んでいたら、「気になることば」について興味深い指摘があったので、ここにご紹介する。「髪結」をどのように発音するかというものである。池田さんは、ことばの使い方にうるさいことで有名な久保田万太郎(浅草生まれの戯曲家、作家で文化勲章受章者)を引き合いに出した。

「久保田さんはやかましく、カミユイではない、カミイイだと言われた。しかしそれは初めから「カ・ミ・イ・イ」と言え、といっているのではない。「カ・ミ・イ・イ」とはっきり言ってはもちろんいけないのである。カミユイのつもりだけれど、それがカミイイと聞こえるカミイイなのである」(池田弥三郎『暮らしの中の日本語』より)

何とも微妙な言い方で、少し戸惑ってしまう。そういえば私の母なども、「カミイさんに行ってくる」などと言っていたことを思い出す。

私が教鞭をとった慶應義塾は、学校法人慶應義塾であり、付属の小学校(幼稚舎という)から大学・大学院、そして病院などさまざまな組織を含む複合体としての学校法人である。だから組織のトップは「塾長」と呼ばれている。そして組織の最高意思決定機関は、約百人からなる慶應義塾評議員会となっている。私も二年間ほど評議員を務めたことがある。この慶應義塾は「ケイオウギジュク」であるが、これも「ギジュク」といっているつもりでも、「ギジク」になってしまうのが久保田流東京っ子の発音のようだ。

池田さんによれば、大学名のローマ字表記をしようとした時に、正式にはギジュクかギジクかでもめて、書類の提出が間に合わなくなった。面倒だからと、義塾をローマ字表記からはずしてしまったとのこと。私も表記に関する経緯については、池田さんのこの文章で初めて知ったが、結果的には、簡潔で便利な英語表記になった。私は、英文で表現する時に、<Keio>とは書いたが、<Keio-gijyuku>と書いたことは一度もなかった。

私が現在仕事をしているのは新宿区の研究所である。この新宿の発音も、シンジュクと発音しているつもりで、シンジクとなってしまうのが、久保田流東京っ子の発音のようだ。つまり、ジュとジの間の発音になる。池田さんによると次の通りとなる(池田弥三郎同著)。

「われわれ、東京者の発音はシンジクである。われわれはシンジュクと聞くと、田舎臭くて、耳ざわりである。むろん、シンジクと久保田さんも言っていたし、シンジュクを嫌っていた」
「久保田さんをはじめ、われわれは、ジと言っているのではなく、ジュと言っているつもりなのだが、あいまいで、不完全な発音のために、ジに近く聞こえるのである」

現代の東京っ子がどのように発音しているかは観察する必要があるし、時代の変化とともに変わっていくことだろう。ことばの使い方はなかなかむずかしいものである。



(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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