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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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世間一般でよく使われている言葉であっても、その意味するところが必ずしも適切に受け止められていないことがある。真意は別にあるということで、今回話題にする「初心」もそのような言葉の一つである。初心と言えば、習い事を始めた時などに、「最初の志や思いを大切にしてね」などと使われていることが一般的である。この「初心」は、『風姿花伝』で知られる能の世阿弥(ぜあみ)が残した有名な言葉である。世阿弥は、「初心」には三つあると言っている。

「是非初心不可忘」 成功や失敗、善悪など、良しとするか悪しとするかは判断のしどころである。とくに、いろいろなことが分かってくる二十四、五歳頃に大切な初心である。
「時々初心不可忘」 人生や芸事のそれぞれの段階における初心が大切である。それまでの経験は失敗に学びつつ、次の段階に向かっていく。その際の初心というわけである。
「老後初心不可忘」 歳を取り老後になっても、それまでの人生経験を踏まえた初心を忘れてはいけない。

よって、必ずしも最初の時の初心だけではなく、いくつかの段階における初心を大事にしようと言うのが、世阿弥の主張するところであったことが分かる。

ところで、世阿弥がものした『風姿花伝』であるが、この書物の成り立ちが大変興味深い。この本の内容は、世阿弥が父親の観阿弥の考えを中心にしてまとめたものである。企業秘密のようなものなので、マル秘扱いだった。観世家に伝来した門外不出の能の技の心得に関する文書は、堀家の蔵に保管されていた。この文書を歴史地理学者の吉田東伍が一冊の書物にまとめたのが『風姿花伝』である。その後、1923年の関東大震災により現物の文書を焼失してしまった。よって、残ったのは元々の文書を印刷した書籍だけとなった。もし、門外不出を理由に書物にまとめていなければ、私たちは能の理論書にして演劇論の本でもある『風姿花伝』を読むことはできず、観阿弥・世阿弥親子による能の極意、ひいては芸の極意を知ることもできなかった。

『風姿花伝』には、「初心」以外にもしばしば引用される有名な言葉が溢れている。「時分の花」(若くて勢いのある時)、「まことの花」(真髄は年齢を問わず)、「秘すれば花」(控え目の価値)などの一連の花による表現は良く使われる。「上手は下手の手本、下手は上手の手本」などは分かり易い。「家、家にあらず、次ぐをもて家とす。人、人にあらず、知るをもて人とす」(継続性と学習し続けることの意義)などの芸の神髄を継承していくことの大切さを主張している。これなどは家業の承継などの参考になる。これらの言葉は、身体知、経験知、暗黙知などにもつながる知の獲得方法についても考えさせられる。分野を問わず、人が体得している技術は、なかなか伝承しにくいものである。先人の秀でた技術や思想を聞き出し、記録し、学び、そして活用する努力が欠かせない。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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