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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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某月某日、天気が良かったので神奈川県の箱根に出かけた。今回のお目当ては、浮世絵師喜多川歌麿の肉筆画「深川の雪」である。この絵は、1948(昭和23)年に銀座松坂屋で開催の「第二回浮世絵名作展覧会」に出品されたが、3日間だけ公開された後、60年以上も行方不明となっていた。2012年2月に古美術商により国内で再発見され、修復の上、最近一般公開されたものである。テレビの美術番組や新聞報道などでも取り上げられたので、この絵は話題となり美術館も結構な人出であった。

歌麿の生年は不明であるが、幼少期から江戸に住み、1806年に没したことは判っている。優れた美人画絵師として、当時絶大な人気を博した。浮世絵研究の基本書の一つである『浮世絵類考』の喜多川歌麿の項目では、「・・・千代男女風俗種々工夫して当時双ぶ方なし、名人」と称賛されている。版下絵のための錦絵は、2,000図ほど描いたようである。肉筆画「深川の雪」は、私たちが見慣れている小さな浮世絵版画ではなく、縦2メートル、横3.5メートルと巨大な肉筆の浮世絵であり、海外の著名な画家と比べても遜色がない。「品川の月」(米国ワシントンにあるフリーア美術館所蔵)、「吉原の花」(米国コネティカット州にあるワズワース・アセーニアム所蔵)とともに、「雪月花」三部作として歌麿肉筆画の傑作と言われている。雪景色とともに、東京深川の料亭を舞台に、27人の遊女や芸者が火鉢を囲み、三味線や拳に遊び、登場する子供や猫もかわいい。手鏡で化粧する人や料理や夜具を運ぶ給仕の女性の姿も見られる。

歌麿は、寛政の改革などで処罰を受けた時期に、江戸を離れて栃木に何度か滞在したようである。なぜ栃木かと言えば、栃木の豪商、釜喜の4代目善野喜兵衛(狂歌名 通用亭徳成)と親しく、その叔父である善野伊兵衛(初代釜伊)の依頼で描いたと伝えられている。歌麿の他の作品も栃木でいくつか発見されているのは、この関係性を物語っている。これは、歌麿と近い存在だった稀代の名プロデューサーである蔦屋重三郎(歌麿は、蔦屋宅に住んだこともある)などの狂歌師仲間のネットワーク(「連」と呼んでいた)があったことによると思われる。

私は美術に詳しいわけではないが、この「深川の雪」を見てから、いくつかの関心が出てきた。
・絵の舞台である深川の地域特性と時代背景についてもっと知りたくなった。
・描かれている素材に関する知識の獲得。例えば、建物、料亭、女性の化粧、髪型、衣服などの文化史は興味深い。
・当時の文化人の人脈図。例えば、文化人のつながりや絵師とパトロンのつながりなどは、今風にいえば「人的関係資本」、「社会ネットワーク」となるので、現代的な意義もある。
・今回の再発見が評価される一方で、「雪月花」三部作は歌麿の作品ではなく偽作(別人が後世描いた)だと主張する人もいる。落款、制作年代、題名などの記載、証拠となる文書など、絵の鑑定評価方法はどのようになっているのだろうか。

知らないことは恥ではない。学ぶきっかけにすればよい。「きっかけと、その後の展開」が重要なことはビジネスと同じである。こちら側がその気になれば、森羅万象は学びの対象、興味の対象となる。鑑賞途中に美術館を抜け出し、蕎麦を食べに行った。再度入館し、ゆっくり展示品を鑑賞できたのは良かった。帰路のついでに、箱根火山の雰囲気が感じられる「大涌谷」に立ち寄ったが、最近とみに外国人観光客が多くなったことに気づく。ここでは硫黄泉で茹でた黒卵を食べ、帰りにはいつも愛用の湘南の店で「生しらす」などの魚介料理に舌鼓を打ち、大変満足な一日となった。(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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