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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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私が住む町は横浜市の南部にあり大船(鎌倉市)と接しているが、その昔は鎌倉郡に属していた。当時は鎌倉郡役所もあったが、80年ほど前の1939年(昭和14)に横浜市に町村合併に合わせて編入された。私にとっての鎌倉は、小中学生時代の遠足旅行先として、そして家族で海水浴に行く江の島鎌倉として認識されていた。近くに住むようになってから約30年にもなると、気晴らしに散歩ができる町となった。企業戦士の皆さんには少し申し訳ないが、梅雨の晴れ間の平日をねらって、6月下旬にアジサイを見に鎌倉へ出かけた。

北鎌倉駅で下車し、アジサイ寺として有名な明月院に向かった。牧野富太郎博士の命名による「ヒメアジサイ」が明月院には2,500株ほどあるそうで、人出で賑わっていた。ほとんどが青色のアジサイで、「明月院ブルー」と呼ばれていると解説書にあった。花の色に影響するのは土壌成分であることがよく知られている。酸性度が増すと青色になり、アルカリ性が増すとピンク色に近づく。紫色はその中間でアリカリ性に近い存在である。別名「七変化」、花言葉「移り気」とあるように、アジサイの色は実に変わり易い。

鎌倉幕府のあった鎌倉は三方を山に囲まれ平地が少なく、土地不足である。そこで墓は崖をくりぬいて作られている。これを当地では、「やぐら」と呼んでいる。この寺には、開山堂の左手に1つ立派なやぐらがある。これは関東管領上杉憲方ゆかりの墓とされているもので、間口7m、奥行き6m、高さ3mもあり、鎌倉でも最大クラスである。方丈前には、それほど大きくはないが、整った枯山水の庭園があり、見どころは多い。この寺の周囲に不純な建物などが無いからだろうか、緑に囲まれ美しい。茶店で抹茶を一杯と行きたい所だが、散策は始まったばかりなので、ここで休憩しているわけにはいかない。

明月院の後は、亀ケ谷の切通しを抜ける。鎌倉は山に囲まれた町なので、他の地域と連結するためには、山を切り、道を作る必要があった。これが「切通し」で、敵との戦いの場ともなった。崖の壁面には、小さな六地蔵が祀られている。途中の三叉路で目に入ってきたのは岩船地蔵堂である。これは頼朝の娘ゆかりのお堂である。歩いていると何かが眼に入って来るので興味深い。山内上杉家の旧跡を説明した石碑もあり、いつの日か鎌倉における上杉家の存在を調べたくなった。その理由は、私の父方の先祖が上杉謙信の家来だと家系の由来記に記載されているからである。

江ノ島電鉄、通称江ノ電の極楽寺駅で下車し、極楽寺切通しに沿って存在する成就院が第二の訪問地である。ここの寺から見る、由比ヶ浜、逗子方面の海の眺めとアジサイとの取り合わせは最高である。なお、かつてはアジサイが通路沿いに密集していたのであるが、2011年の東日本大地震の被災地に、寺がアジサイを寄付したとのことで、大分減ってしまった。やっと少しずつ増えつつある印象である。ここからは裏道を歩き、御霊神社経由で第三の訪問地である長谷寺に向かう。長谷寺は長谷観音などのある人気の寺で、いつも沢山の人出である。入場時に整理券が渡され、入場者数の管理を行っている。裏の山道が遊歩道になっているが、人が多くてなかなか動かない。ここのアジサイは青色系と紫系が断然多い。アジサイの下に位置する経蔵(輪蔵)は回転式書架であり、そこには大蔵経が収められている。一回転すると一切経を読んだことになり、大変横着な装置である。私の好きな場所の一つである弁天窟は、弁財天と十六童子の壁面彫刻物などがあり、僧侶の修行空間に入ったような気がする。

寺近くの食事処の店で、4日ぶりにあがったという生しらす丼を食べ、和菓子を土産に買って、鎌倉を後にした。私にとっての鎌倉散策にはいくつかの段階があるようだ。最初は、歴史や地理を知るため、次いでより深くテーマごとに探索するため、そして、近年では健康チェックのために散策している。山道を歩けば、容易に脚力をチェックできる。そして近年では、恩師の墓参りが加わった。鎌倉散策の進化論は、散策が人生と共にあることを実感できる機会である。散策の結論として、日常の喧騒からなる俗社会とは程遠い聖なる空間に一時的でも身を置き、人間の心身バランスを取ることの大事さを再認識した。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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