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Men’s Life Style
金安 岩男

著者:金安 岩男
1947年2月に東京の下町に生まれる。
学部で経済学、大学院で地理学を学び、外資系情報企業、国立大学、私立大学での勤務経験を有し、研究、教育、研修などの各種プロジェクトを実施。地理学者として、計画実践、プロジェクト発想に取り組んでいる。海外諸都市の街歩き、相撲などを趣味に、発想のヒントをいつも探究中。社会的活動として、政府機関、地方自治体の各種審議会、委員会などの会長、委員などを務めている。
主な著書に、『時空間の構図』、『プロジェクト発想法』、その他多数。現在は、慶應義塾大学名誉教授、新宿自治創造研究所所長。

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先輩学者のある計らい
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今回は、先輩学者の後輩若手研究者たちに対する、ある計らいについてご紹介したい。それは1980年に東京で開催された、国際地理学会開会中での小さな集まりであった。37年前のことなので今や大昔のことになるが、私の若い頃の思い出としてなぜか強く記憶している。

この国際学会には、海外から多くの地理学者が参加していた。地理学の研究テーマの一つに、技術革新(イノベーション)が空間の中でどのように広まっていくかという研究分野があり、この種の研究の第一人者といっても過言ではないスウェーデンの地理学者トーステン・ヘーゲルストラント教授(以下H教授)も来日していた。私も関心を持っていた研究テーマであった。名古屋大学の石水照雄教授は、若手研究者たちのために一席設け、H教授をゲストとして招くことになった。お誘いがあったので、私も喜んで参加した。H教授には、研究上のことでぜひとも質問したいことがあったからだ。

H教授は、まだあまりコンピュータ技術が進んでいない1950年代に、新技術(イノベーション)の空間伝播シミュレーションモデルを開発した。このモデルは、スウェーデンの農村部における新技術であるトラクターの普及がどのようなものであったかを再現するシミュレーションモデルだった。比較的均一な農村部という土地条件を前提に、持ち込まれた新技術が人々にどのように受容されていったかを示した。人々にはいろいろな種類の人がいる。新しものがり屋は、新しい物ならすぐにでも飛びつく。中には、なかなか採用しない人たちもいる。人さまざまである。これらは受容者の「情報圏」として定式化された。

私は地理学を理解する上で、このモデルは最適なモデルだと考えていた。そこで、私がH教授に聞きたかったことは、なぜH教授がこのようなモデル開発を思いついたのか、ということだった。意見交換の中で、私がこの質問をしたところ、H教授からは大変興味深い答が返ってきた。スウェーデンには、200年間にもわたる人口移動に関する個人データがあり、このデータを利用することが出来た。よって、モデル開発が可能となったとのことであった。なるほど、と私は納得した。現代だったら個人情報保護の観点から、データ利用はきっと無理なことだろう。研究論文でしか知らなかった開発者から、直接話を聞けたので感激した。若い時代だったからこの程度のことでも感激したし、自分自身の研究推進の上で励みにもなった。

石水教授は後年病気療養中だったが、亡くなられたことを人づてに聞いた。研究の良き指導者で、優秀な研究者を多数育てた。大学間を超えて、若手研究者に集まる機会をつくり、研究の先導者としてのお手本を示した。先人の配慮のもとで道はつくられ、後に続く者たちが育っていくものである。学問に限らず、企業でも、行政でも、どの分野でも同じことだろう。「イノベーション」なる言葉が盛んに使われる今日、私は「イノベーション」とう言葉を耳にするたびに、かつてH教授を囲む集まりがあったあの日のことを思い出す。
(金安岩男 慶應義塾大学名誉教授)
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